日本 行政

権限が強すぎる日本の行政府ーアメリカの判事後任問題に見る日本の司法問題

Kinyucho3
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先日、米連邦最高裁のスカリア判事が急逝した。米連邦最高裁は9名の判事で構成されており、そのうち5名は共和党の大統領に指名されたスカリア氏を含む判事、4名は民主党大統領の指名を受けた判事で構成されている。

そのため、オバマ大統領は民主党寄りのリベラル系判事を指名するものと予想されているが、米連邦最高裁判事の指名には議会の承認を必要とする。だが、上院は共和党が過半数を占めており、オバマ大統領が指名した候補が却下される可能性が高い。

このように、米国の行政(大統領府)と立法(議会)、司法(連邦最高裁)は一定の距離を保った上で、互いに暴走しないよう権限に制約が与えられている。

 

権限が強すぎる日本の行政府

一方、日本は行政(内閣)の権限が強い。

最高裁判所は、最高裁判所長官1名と、最高裁判所判事14人の計15名の最高裁判所裁判官で構成されているが、最高裁判所長官は内閣の指名に基づいて天皇が任命し(日本国憲法第6条第2項)、最高裁判所判事は内閣が任命し天皇が認証する(日本国憲法第79条第1項、裁判所法第39条第3項)。

また、安保法案可決にも重要な役割を果たした、内閣法制局は内閣に置かれ、内閣法制局長官は内閣が任命する。

これらに国会の承認は必要ない。

安保法案の時には、従来の長官と同様に、解釈変更に反対していたナンバー2内閣法制局次長 横畠裕介氏ではなく、外務省出身で解釈変更に賛成していた小松一郎氏を長官に登用する異例の人事に踏み切った。

内閣法制局は内閣の一部であるが、政府が国会に提出する全法案、国会承認を必要とする条約は法制局の審査を経なければならず、実質的には司法としての役割を果たし大きな権限を持つ。しかし、この人事を内閣が一任で決められるようでは形骸化してしまうリスクがある(1952年の法制局発足以来、自粛して法制局からの内部登用としてきた)。

2013年8月に内閣法制局長官となった小松氏は、2014年1月に体調不良で入院、その後も長官を継続して解釈変更を進め、同年5月に長官を退官、同年6月に亡くなった。そして、その翌月7月に安保法案が閣議決定されることとなった

また、小松氏の後任となった横畠氏は長官に任命されたが、安倍首相の「集団的自衛権をめぐる解釈改憲の流れは変わらない」という強気の姿勢にも押され、解釈変更を認めるようになる。

 

進む官邸主導

このように人事権を行使することで、安倍首相は自らが望む政策を実現させている。今までは自粛されてきたというのもあるが、これは制度上に問題がある。実際、民主党政権は法制局長官を「政府特別補佐人」から外し、法令解釈の答弁は官房長官らが担当してきた。ただ、官僚との良好な関係構築に腐心する野田内閣は法制局長官の答弁を復活させている(結果的に、野田内閣が「駆け付け警護」を可能にしようとした法整備は法制局の抵抗によって断念)。

既に述べたとおり、本来一定の距離を保たなければならない行政(政府)と立法(議会)、司法(最高裁・法制局)だが、現状は行政の権限が強すぎて対等な関係にはない。

さらに、2014年5月に設置された内閣人事局によって官邸主導が進められている(関連記事:官邸主導・政治主導と人事権-日本と英国との比較 ー 内山融)。同局の主要な仕事の一つは、官僚の幹部人事の一元管理で、官僚幹部の人事に対する首相官邸の影響力を強めることに成功している。

 

こうした行政府の過度な権限は人事権に限らず、先日話題を集めた放送局への介入もそうである(関連記事:監視されるべき権力者が監督する異様さー欠陥を抱えている放送制度)。政府(行政)が放送局を監理している国はOECD諸国では日本だけだ。

16日の衆院予算委員会では、維新の党の落合貴之議員が、集団的自衛権行使容認に伴う憲法9条の解釈変更に関する協議の記録を残さなかった問題について質問を行ったが、これも行政の権限を悪用した形だと言えるだろう。国家公務員制度改革基本法は政治家による官僚(行政)への不当な介入を防ぐ目的で、官僚が閣外の国会議員と会った際に記録を作成するよう定めている。しかし、今回、制度を所管する内閣人事局は口利きを想定し「不当な要求があった時にのみ残す」と解釈していると主張しており、官僚(行政)に介入することを防ぐ形となっている。

 

米国の連邦最高裁判事の指名は議会の承認を必要とするため、議会上でその是非が議論されるが、日本のように国会の同意が必要ないと、是非が問われる機会が少なく注目されることも少ない(選挙投票時に最高裁裁判官のマルバツを選ぶが実際どういうことをしているかなど知らない人が大半だろう)。

結果的に、行政府が好きにできる可能性も高まる。この問題はあまり目が向けられていないような印象だが、今後もっと注目し、是正していくべきではないだろうか。

 

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