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日本の難民受け入れ問題はどのような状況か?

シリア難民
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「日本は難民受け入れの設定基準が厳しすぎる」と、アムネスティ・インターナショナルを含めた支援関係者からは言われている。ちなみに、難民とは「人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由として迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために国籍国の外にいるものであって、その国籍国の保護を受けることができないかまたはそれを望まない者」(1951年難民の地位に関する条約第1条)を指す。では、現状どのような形で受け入れていて、そしてどのような障壁が生じているのか?確認していきたい。

 

日本の難民受け入れの現状

2011年以降、63人のシリア人が難民認定を申請しているが、認められたのは3人だけ。難民受け入れの代わりに、シリア、イラクの難民と国内避難民向けに約8.1億ドル(約969億円)を支援すると表明している。また、安倍首相が「難民より国内問題解決が先」と発言したことで、イギリスのGuardianは「人権団体は、ロシアやシンガポール、韓国と並び、日本は高所得の国なのに、第2次世界大戦以降で最悪の難民問題に手をさしのべることに失敗していると強調している」として「日本は昨年(2014年)、1億8160万ドルを国連の難民対策部門に支出し、アメリカに次いで2番目に多いが、シリアや他の難民受け入れは、その経済規模に見合っていない。日本で難民資格を申請している60人のシリア人のうち、認められたのは3人であり、約30人は人道上の理由で長期滞在が認められているだけだ」と指摘した。

 

しかし、日本にもかつて難民を積極的に受け入れてきた経緯もある。1978年から、受け入れが終了した2005年末まで、インドシナ難民総数144万人中11,319人を受け入れてきた。インドシナ難民とは、1975年のベトナム戦争前後に、ベトナム、カンボジア、ラオスなどで、相次ぐ社会主義体制への移行を拒否してきた難民である。政府はその際、受け入れ以前、難民条約批准にしてこなかったが、「閣議了解」で受け入れを決め、定住促進センターをつくり、日本語教育や職業紹介・職業訓練をしてきた。

 

各国の難民対策の状況

元々移民によって建国されたアメリカでは、オバマ大統領が2015年11月16日、G20サミット後に記者会見し、「必死に安全を求めている難民を歓迎する」と述べ、難民受け入れを続ける考えを示した。しかし国内では、特に共和党の州の知事が、「自分の州ではシリア難民を受け入れない」と表明。また、共和党の大統領候補であるドナルド・トランプ氏、マルコ・ルビオ上院議員、ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事なども受け入れには否定的な意見を表明した。

ドイツでも、難民に関して比較的寛容な対応がとられていた。昨年11月13日のパリ同時多発テロ事件以降も、企業が先を争って新たな労働力として確保しようとしていた。しかし、大晦日、ケルンで起きた女性に対する襲撃や窃盗事件では、容疑者に少なくとも22人の難民申請者が含まれており、以降、難民受け入れには反対するデモも起きている。それを受けてメルケル首相は難民による犯罪の罰則強化を検討したが、抗議者からは首相辞任を求める声も上がっている(関連記事:メルケル首相「多文化主義は完全に失敗」ー今この発言に注目すべき理由)。

 

日本での難民受け入れに関する議論

現状では、難民受け入れが少なすぎるとの批判がある一方、治安の悪化など問題視する声も強い。

また、日本に来る「難民」は出稼ぎで来る場合が多く、虚偽内容を申告する場合も多い。審査期間は長く、一連の審査に要する期間は平均約3年。難民認定される人に限っては、6年弱の時間がかかっている。審査結果を待つ間に日本で結婚し、母国の家族を呼び、定住化してしまうケースも多い。そのため、同じ理由で来る人を拒否するなど、審査の効率を上げるために、法務省による運用の見直しや法改正が指摘されている。

また、外国人労働者をどのように定義するかも必要だ。少子高齢化が進む中で、どのような移民を受け入れるのか、受け入れないのか明確にすべきである。

ただ、最大の問題は、難民、移民を受け入れるべきかという議論が進んでいないことだ。少子高齢化の現状を考えれば、多少の移民受け入れは避けられないと思うが、世界中で労働人口は不足しており、各国が移民政策を重視している。その意味でも、早めに着手しないと能力の高い人材を日本に呼ぶことは難しいだろう。

 

今後の難民受け入れの展望

上述のように、日本ではインドシナ難民は多数受け入れてきたが、シリア難民の受け入れは極めて少ない。この背景には、中国人や韓国人、欧米人などに対する忌避感の強さがあると思われる。近年は都内を中心に街中で外国人を見る機会も増えたが、未だに抵抗はあるだろう。

また、テロへの懸念もある。難民と移民は別物だが、海外から受け入れるという意味では同様の体制づくりが必要になる。早急に解決すべき問題が国内にも多い中で、すぐに受け入れるということはできないだろう。感情的に「受け入れるべき」という意見には反対だ。しかし、5月には伊勢志摩サミット(G7)を控えており、難民問題も主要なテーマの一つとなる。その時に日本も立場を問われることになる。その時にどう答えるのか、また、少子高齢化を前提にした上で、どのように労働力を確保するのか、もっと本格的に議論していくべきではないだろうか。

 

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