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炭素税を実行すべき時 ー ケマル・デルビシュ&カリム・フォーダ

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ワシントンD.C.ーここ数十年、原油価格は大きく変動している。1バレル10ドルから140ドルまで幅があり、産油国と消費者の両方に課題を突き付けている。しかし、政策立案者にとっては、こうした変動は重要な世界目標を進めるチャンスだ。昨年9月に採択された持続可能な開発目標や12月にパリで合意した気候協定に貢献できる、気候変動の緩和や持続可能な経済を構築するといった目標だ。

最近の原油価格変動は古典的なミクロ経済理論のクモの巣モデルと似ている。高値は原油への投資増加を刺激する。しかし、探査と採取の間に大きなタイムラグがあるのを考慮すると、新しく産出されたものが流通に乗るまでに代替品が発生し、需要が供給に追いつかなくなる。そうなると、価格は騰落し、原油代替品を含めた探査と投資も減少する。そして新たに不足が出れば、価格は再び高騰し、そうしたサイクルが繰り返される。

このサイクルはその後も続く。他の要素、再生可能エネルギーのコスト減少やエネルギー集約型でない生産プロセスへの移行などが影響するが、おそらく狭い範囲内でクモの巣は張り続けられるだろう。いずれにせよ、価格の高騰は避けられない。

 

こうした背景をよそに、年初以来1バレル35ドル以下という今日の低価格は、変動炭素税を実行する絶好のチャンス(著者の一人であるケマル・デルビシが1年以上も推薦している)だ。この案は、税金が原油価格の上昇と共に緩やかに下がり、下落と共に再び上がる、といったシンプルなものだ。

原油価格下落時に大きく増加、上昇時に減少といった、調整が均衡でない場合、このシステムは次第に炭素税全体を押し上げる。逆サイクルに陥ってもだ。こうした緩やかな増加は、気候変動をコントロールするための大半のモデルが求めているものである。

次のようなシナリオを考えてほしい。2014年12月、政策立案者は炭素MT(1トン)あたり100ドル(Co2に対する27ドル課税と同等)の税を導入した。米国の消費者は、この新しい税金の影響をすぐに受けた。そのコストは消費者の負担になるのだ。ガソリン1ガロンの全米平均価格が2.23ドルから2.47ドルになり、0.24ドル上がった。それでも、2007年から2008年の高値よりはるかに安い。

以来、原油価格が5ドル上昇すると、1トンあたり30ドルの炭素税が減った。また、5ドル下落すると、1トンあたり45ドル増えた。結果的に、先月は市場基準価格と実際の税金を含めた消費者価格の差は0.91ドルとなる(下図参照)。この増加は炭素価格を大きく押し上げ、政府に今日の炭素1トンあたり375ドルに至る収益をもたらし、財政的な優先順位を満たした。一方で、原油価格の急落によるガソリン価格の下落が緩和されている。今日の安い原油価格を考えると、1トンあたり375ドルはかなり高いが、炭素1トンあたり150から250ドルくらいの低価格でも今後10年に渡って国際気候目標を満たすのに十分だ。

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政策立案者はこうしたアプローチで市場を利用し、化石燃料への依存をやめるよう推進できる。消費者に大きな、あるいは急な負担を強いることなく、原産国から輸入国の財務部門へ黒字(利益)の再分配が可能だ。実際、利用者コストを安定させれば、大きな利益が生まれるだろう。

こうした戦略が政治的に実行可能となるには、低価格のときに着手するのが重要だ。一旦、軌道に乗れば、誰もガソリン(または他の製品)の価格をあまり気にせず、政治的にも論争とならなない。とても大きな収益を生み出すはずだ。そうした収益は減税や研究支援といった形で国民に還元できる。

変動炭素税の利点にもかかわらず、このような、または似たような形で炭素税を上げるために今日の低い原油価格に資本投入した国はない。バラク・オバマ米国大統領は原油へのある種の課税を求め、低価格が突破口となる認識を示唆している。世界目標に向けて同時に動く、思慮深く柔軟で、効果的な政策を実行するチャンスはそう頻繁にない。政策立案者はそうしたチャンスをタイミングよく掴むべきだ。今こそ変動安定炭素税の時だ。

 

Kemal Derviş(ケマル・デルビシュ)
前トルコ経済担当大臣、前国連開発計画(UNDP)総裁、現米シンクタンク ブルッキングス研究所副所長
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Karim Foda(カリム・フォーダ)
米シンクタンク ブルッキングス研究所研究員カリム・フォーダ
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国内独占掲載:© Project Syndicate

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