ヨーロッパ 中東 教育

シリア難民に高等教育をー ジョーン・シャタック&ロバート・テンプラー

6154
Pocket

ブタペスト ー 記録的なシリアへの募金を募った2月早々のある日にロンドンで寄贈者達が顔をそろえた時、難民の子供達への教育は検討すべき課題の上位に位置付けた(関連記事:難民の子どもたちを助ける突破口とは?)。

ノーベル平和賞を受けたマララ・ユスフザイは「この世代を失うことは世界にとって大きな損失になる。」と説明した。

 

 戦争もいつか終わる

しかしシリアの就学年齢の子供達だけが、失われるリスクにある世代ではないことは覚えておかなければならない。国際教育研究所(IIE)の概算によると、中東と北アフリカにいる400万以上のシリア難民の45万人が18歳から22歳で、そのうちの約10万人は大学に行く学力がある。彼らもまた更なる教育を受ける機会を切望しているのだ。

平和は最後にはシリアに訪れる。正確にいつかを知ることは不可能だが、全ての戦争には終わりがある。いつの日にか銃声は止み、国は再生を始める。イラクとアフガニスタンでの劇的な失敗から我々が学んだように、再建は部外者達ではなくシリア人達自身がその努力を導く場合のみ成功するだろう。何百万人ものシリア人が外国に逃れようとしており、最も国が技術を持ち教育を受けた労働者を必要とする時に、彼らが絶望的に不足する状況に直面することになる。

 

既に多くの大学が動いている

こうした理由から、シリア難民により高い教育を提供する世界的努力がなされなければならないのだ。ロンドンでの会議で100億ドル以上が集まった。これにより、最も多くの難民を受け入れている国々である、トルコ、レバノン、ヨルダンで、しっかりした技術的支援と大掛かりな介入によってバックアップしなければならない。そのような努力は戦争によって土地を追われた人々に希望を与えたり、ヨーロッパに逃れる動機を減らしたりするだけでなく、受け入れた国々の教育力を助けることにもなるだろう。

多くの大学は既に難民を助けるために動いている。ブダペストにある中央ヨーロッパ大学では、生徒や職員達が去年の秋に町の列車の駅に大勢いた難民を助けるために駆け付けた。また我々は難民に英語、ハンガリー語、そして亡命法を教えるための特別なクラスを設け、資格ある申込者には奨学金を提供したりもした。我々はシリア人の学者を連れてきて、彼らの国でやがて起きる再建について話してもらったりもした。そして我々の大学はヨーロッパ中で同じように活動している多くの大学のほんの一例に過ぎないのだ。

 

資金と新しい教育方法が必要

これらの努力は重要なのだが、それでも彼らはシリア近隣の国々の難民を見逃している恐れがある。祖国では大学に行く学力のあるシリア人をトルコだけでも何万人も受け入れている。彼らのほとんどは勉強もしていなければ働いてもいない。5%以下の者がトルコの大学に在籍している。公立、私立大学により多くの基金が集まれば、その国の人と同様に、難民にもっと教育の機会が広がる助けになるはずだ。

ロンドンでマグレブ経済フォーラムの事務総長のAmel Karboulは、テクノロジー会社に向けて、難民教育のために「クリエイティブで、もしくは破壊的でさえあるかもしれない」解決策を出すように要求した。確かに大人数の学生になる可能性のある人々に学ぶ機会を与えるには、新しい形の経済効率の良い大学教育が必要となり、それはオンラインコースと安価な仮設施設での授業を組み合わせることになるだろう。

授業は英語を含んだ複数の言語で行われ、カリキュラムの焦点は技術と実用性に置かれるべきである。教えるものの中に科学的・客観的思考法のトレーニングやプログラミングのコースを含むのも良いだろう。一番重要なのは、生徒達が学びながら働けるように、アクセスしやすくすることと柔軟性を持たせることだろう。

当面、技術的な学位は情報技術、プロジェクトマネジメント、建設マネジメント、都市計画、教員研修、公衆衛生、看護の分野で提供出来るだろう。また授業内容はシリア難民と彼らの受け入れ先の国々の間の文化的類似にスポットを当てる。多種多様な人間の集まりが混ざり合う公共の場所は、教育だけでなく紛争後の状況をうまくやっていくためにも欠かすことが出来ない。

 

ヨーロッパが専門知識だけでなく資金力も持ってこれを導いていくべきである。シリア政府のカリキュラムを真似するのは役に立たないだろう。プロジェクトの最初の段階は、教員と管理者達をトレーニングすることを必要とし、同様に教授達にどのようにオンラインコースを作るかを含む新しい教育方法を教えなければならない。

提供される教育は贅沢なものにはならない。生徒達には巨大な図書館やジムや蔦に覆われた中庭へのアクセスなど無い。彼らが通う大学は世界クラスの研究大学ではない。しかし彼らが受ける教育は、シリアの難民に未来を与えるということを保証する。そしてその未来は彼ら自身と彼らの国にとってより明るい前途を持たらすものなのだ。

 

関連記事:

減少する教育への国際援助資金をどう増やしていくかーゴードン・ブラウン(イギリス元首相)

難民危機―何がシリア難民をヨーロッパへ「追いやる」のか

日本の難民受け入れ問題はどのような状況か?

 

6154

John Shattuck(ジョーン・シャタック)

中央ヨーロッパ大学長

 

6283
Robert Templer(ロバート・テンプラー)

中央ヨーロッパ大学公共政策スクール理事

 

国内独占掲載:© Project Syndicate

Pocket