中国 経済

不安定な中国経済はどうすれば改善するか? ー マイケル・スペンス(NY大学教授)

3926
Pocket

ミラン ー 中国の経済見通しの不確実性は、グローバル市場を混乱させている。とりわけ、あまりに多くの疑問に答えることが困難であるという理由のためだ。実際、中国の動きを予測することはほとんど困難になっている。

 

弱まる外需

実体経済では、外需の弱まりを受けて輸出主導の貿易が縮小している。ヨーロッパと日本の遅い成長、米国のゆるやかな成長、発展途上国(インド以外)の深刻な課題に直面して、中国の貿易エンジンは活力の大半を失ってしまっている。

しかし同時に、国内需要は上昇しており、中国の成長率は比較的高いままであり、これは家計の負債を増やすことなしに達成された偉業といえる。個人消費が拡大するにつれて、公共事業は拡大し、多くの人々への雇用を生み出してきた。このことは、健全なリバランスが成功していることを示している。

 

企業全体としては深刻な状況

企業セクターの状況は複雑だ。一方では、イノベーティブかつ活発な企業が成長を推し進めている。実際に、ジョージ・S.イップ氏とブルース・マッカーン氏の近刊書(China’s Next Strategic Advantage)で述べているように、このようなイノベーションは、バイオテクノロジーから再生可能エネルギーに至るまで、広範囲な分野で起きている。最も目に見える進歩は、アリババ、テンセント、百度、レノボ、ファーウェイ、小米科技のようなIT企業で起きている。

他方、企業セクター全体は深刻な状況にある。2009年の信用取引の急速な拡大は、日用品部門、鉄鋼のような基幹産業、そしてとりわけ不動産での莫大な過剰投資と過剰生産につながった。中国の旧経済成長モデルであり柱となってきた産業は苦境に陥っており、現在の成長減速に関して大きな責任を負っている。

 

中期的には安定成長を望めるか

このような課題に直面しているにも関わらず、よりイノベーティブで消費者重視の経済への移行が進行している。このことは、中国の経済がメルトダウンではなく、揺れのひどい減速を経験していて、即ち金融システムの問題が増大しない限り、中期的にはある程度の緩やかな成長が望めることを示唆している。

現状では、主に重工業と不動産業の弱体化のために、不良債権が増大している。当局筋は、商業銀行が所有している債権のうち不良債権が1.67%を占めていると報告しているが、中国の投資銀行CICC は、その数字は8%に近いと推定している。もしそうであるならば、銀行部門、そしてより広範囲で、かなり苦しむことになるだろう。

こうした問題が起きるかどうかは、政府の対応次第だ。アジア金融危機の後の1990年代後半と同様に、中国は統合ローン、不良債権処理、銀行資本増強のために、巨大な国家財政に頼る必要があるかもしれない。

 

資本逃避は公式数字より悪化している兆候か

しかし懸念はここで終わらない。民間の準資本流出額は莫大なままで、減少する気配は見えない。結果として中国人民銀行(PBOC)の保有している準備金は、昨年より約5,000億ドル減少し、過去2カ月は各月で約1,000億ドルずつ減少している。このような流出に加えて、株式や通貨市場の不安定さと相まって、投資家と政治家はますます不安になっている。

不幸なことに、このような動きに関する明確な説明はまだなされていない。中にはそれを資本市場の開放が進んでいること、割高な為替レートの組み合わせのせいにし、一旦通貨が市場レベル付近にリセットされれば、民間の準備資金流入は再開されるだろうと予測する者もいる。一方、内部情報の影響ではないかと疑っている者もいる。つまり資本逃避は、経済状況と成長見通しが公式発表される数字よりさらに悪化した兆候であるというものだ。

 

透明性が重要

グローバル経済の中で、中国のシステム上の重要性を考えれば、中国の計画と展望に関する不確実性は、世界資本市場に影響を与えるのは必至である。そのため、中国政府が意思決定の透明性を増すことは大変重要であり、中国の政策決定をより効果的に伝えることも重要だ。中国人民銀行周小川総裁の(長く不可解な公式の沈黙に引き続いて)沈静化を狙った最近の声明の影響を考えてみればいい。中央銀行は人民元を、主要通貨とドルに対して「基本的に安定した」状態にする、とその声明は述べていた。

 

国家財政と信用割当システムを分離しなければならない

しかし中国の金融システムに影響を与えていて、未だ取り組まれていない大きな問題は、国家管理・所有が蔓延していることであり、資産市場に浸透しきっている暗黙の了解だ。このことは、(中小民間企業が最も苦しんでいる)資本の不適切な配分とリスクの過小評価につながっている一方で、手ぬるい信用割当文化に貢献していることになる。高度な量的緩和政策が併用される場合、信用割当規律が無いことは、とりわけ問題となる。なぜなら、これはゾンビ企業を、人為的に再浮上させ続けることが可能になるからだ。

この問題を解決するために、中国の指導者達は国家財政と信用割当システムを分離しなければならない。しかしそうするためのロードマップは一切存在しない。さらにその上、資本勘定を広げるために努力を積み重ねなければならない。このプロセスが国境を超えた資本の流れを複雑化させるのは疑いないが、それによって、このプロセスを通じて、資本の配分の有効性を促進することになる。

 

透明性が増せば、改善するために多くの事ができるだろうが、現在の中国の経済的に安定しない期間は、続くことだろう。 足元の確かな改革と共に、国家資源を賢明に使わなければならない。そうすれば中国は、緩やかだが持続可能な長期的成長を達成できるはずだ。

関連記事:

「ヘリコプターマネー」を実行すべきか?

多くの農民工が劣悪な環境で生活する中国ー7億人以上が都市に集中

資産10億ドル以上の富豪数、中国が世界一に

 

Michael Spence(マイケル・スペンス)
新興国の経済政策、情報の経済学らが専門。ノーベル経済学賞受賞者。ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネスにて経済学の教授を務める。スタンフォード大学フーバー研究所のシニア・フェロー兼経営学大学院フィリップ・H・ナイト名誉教授も務める。

 

国内独占掲載:© Project Syndicate
Pocket