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<山尾志桜里議員インタビュー>「絶望の中から希望が生まれた」ー待機児童問題

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「保育園落ちた日本死ね」と題した匿名ブログをきっかけに待機児童問題に関する議論が盛んになっている。2月29日の国会答弁でこのブログが取り上げられ、安倍首相が「匿名である以上確かめようがない」と発言し、「保育園落ちたの私だ」というプラカードを掲げた国会前デモにまで展開した。また、9日には国会内で約2万8000件の署名を塩崎恭久厚生労働相に直接手渡した。そこで、実際に答弁でこのブログを取り上げ、度々待機児童問題について言及している民主党・山尾志桜里議員に、現状の待機児童の問題点や育休などについて話を聞いた。(10日、取材・文:Platnews編集部)

 

――「保育園落ちた日本死ね」の声は、今では大きな反響を呼び、署名運動にまで発展しています。今回の一連の動きについてどのようにお考えでしょうか。

山尾志桜里議員(以下、山尾):

子育て中のお母さんは、時間がないし、家から出られない。そこにネットというツールを彼女たちが手に入れて、一つのブログが瞬く間に広がって、それを私が国会で取り上げて、野次、そして「匿名であり本当か確かめようがない」という総理の反応、こういう思いもかけないフックもあって、さらにみんなの気持ちが燃え広がった。そして今度はネットの世界から飛び出て、行動を可視化しようとスタンディングデモをやって、昨日(9日)、署名を私のところへ届けてくれた。国会質問まで傍聴してくれた。最終的には署名を大臣にも受け取ってもらった。この新しいネットというツールを通じた、政治家と市民同士の繋がり、6日間で27,682通の署名が大臣に到達した、というすごい大きな力を感じました。

もう1点は、待機児童を抱えたお母さんたちの現状は切実ですから、陳情を言って、会ってくれて万歳、ということにはならないので、現状をしっかりと見て頂きたいと思います。本気でこの待機児童問題を解決しようとしているのか。政治は動くのか。やはり私には、予算委員会で取り上げた「保育園落ちた」に応える責任があると思っています。1つの政治運動に火をつけた責任もあります。そこで私、委員会の場で言ってしまいました。「保育士さんの給与上げます」、「近々、保育士さんたちの給与を上げるという法案を出します」と。

 

最大の問題は保育園不足ではなく給与不足

――安倍政権の子育て支援政策や待機児童の問題を改めて教えてください。

山尾:

安倍政権は、ハコ(保育園)作りを強調するんですよね。ただ、そこにハコがあっても、保育士さんたちが足りなければ、そこに預けることができない。そのため、私たちはまず、人を優先させるべきだと考えています。

なぜ保育士さんたちが少ないのかというと、安倍政権では、資格保有者の不足、既に資格を持っている人が復帰できないことにあると考えています。保育士さんになろうとしている人の学費手当、また、「1回辞めてしまっている人に20万円あげます」としている。

でも問題はそこではない。現状は、免許を持っている人の中で、3分の1の人しか保育士さんとして働いていないんです。学費が高いから保育士さんになれないというわけではない。一方で、保育士さんもママなんですよ。保育士さんが保育園に子どもを入れられなくて、保育士さんたちも復帰できない。さらに、復帰しても、給料が低いため自分の子どもを保育園に通わせるだけの生活ができないわけです。だから、保育士さんたちの再就職のために、20万円あげてもダメなわけなんですよ。1回20万円もらっても、保育士さんたちが子どもを保育園に預けられるのか、これから先も保育士さんとして働き続けて、月給で生計が成り立つのかといったら、厳しい。だから、結局、問題は保育士さんたちの給与に収斂されていく。

もちろん、ハコ作りも不要だとは言いません。都心部で、保育園が足りていないところもあって、それをやらなきゃならないところもあります。けど、今起きているのは、都心部のいくつもの自治体で、作れるだけのお金は用意しても、実際作れていないんですよ。自治体によっては施工率5割切っているところもあるんです。それはなぜかといいますと、一つは、近隣に住む方の賛同が得られない、ということもあるんです。昨日も述べたんですけれど、塩崎厚生労働大臣とか総理は、近隣の方々含めて、子どもは国の未来だから、いくつかの折衝があっても、できれば理解してもらえないかと頼む立場ですよね。ですが、頼む側が、ブログで名を名乗れなんて言ってたらですね、頼めないじゃないかというふうに思います。

 

――保育士の給与の低さを改善するための法案として、現状どのような案をお考えですか。

山尾:

財源が不足しているポイントは、軽減税率の横やりで子育て支援が後退させられたことにあります。軽減税率の1兆円のうち6,000億円の財源が決まっていない。一方で、増税のときに国民に約束した、子育て支援の充実(増税引き上げ決定時に子育て支援充実策を三党合意)。その3,000億円が決まっていない。私は何度も総理に「軽減税率より子育て支援に使いますよね」と聞いているんですけれど、総理は「軽減税率を優先させる」と言っている。軽減税率は法律ですが、子育て支援は閣議決定なんです。子育て支援も法律にしなければならない。いくつか解決策はありますが、喫緊の課題は、保育士さんの給与の問題です。だから、まずは保育士さんの給与アップというのを法律にして、今国会に提出しようと思っています(取材後、民主党と維新の党が月1万円の賃金上昇を想定する議員立法を提出する方針を固めたと発表されたが、翌日確認したところ、「目指すべきところは全産業平均。ただ、今回の給与1万円アップはその第一歩という認識です」とご回答を頂いた)

 

絶望の中から希望が生まれた

――今回、匿名ブログで始まり、法案作成の動きまで繋がったことで、 「SNSから政治を動かすことができる」という希望が国民の中で芽生えたと思います。今後もこうした名もなき声を取り上げていきたいと考えていらっしゃいますか。

山尾:

そうですね。「絶望の力」と書いて下さった方もいたけれど、絶望の中から希望が生まれたので、やっぱりもう一度絶望に落としてはいけないなと。署名をもらった時に苦しいぐらいの気持ちになったんですよね。それに具体的な形で応えなければいけない。

今回、ネットの匿名の声に政治家はどう向き合うのかというのが1つのテーマとして浮かび上がりましたが、それに対して、与党の一部の方々は匿名だと言って切り捨てたわけですよね。確かにネット上には、責任を持たない発言も多々あります。ただ、政治家たるもの、それが国民の声として、取り上げなければならない、そう思うかどうか、思えるかどうか、それは政治家のアンテナだと思うんですよ。匿名だから切り捨てていいというものではない。匿名の中の、名もなき声の中にも、政治家たるもの、「これは取り上げなければならない」と突き動かされるものがあると思うんですよね。もちろん、責任を持たず個人攻撃をしているブログを取り上げるかといったら取り上げない。今回の非難の対象は、どこか特定の個人でも、特定の政党でもなければ、政治家を非難するものでもなかった。当初安倍総理を非難するものでもなかった。誰を非難していいかわからない。自治体を非難すればいいのか。市役所さんの職員さんを非難すればいいのか。保育園を非難すればいいのか。県を非難すればいいのか。国を非難すればいいのか。それとも競争に受かったお母さんたちに怒りをぶつければいいのか。誰にぶつけていいのかわからない結果、「日本死ね」っていう言葉になっているんですよね。決して個人攻撃や、ぶつける対象を間違っているものでもない。こんなに多くの人が共感したのも本音の声だから、与党の皆さんにも真摯に受け止めてほしい。「誰が書いたのか」というのは論点ではないのではないかと。私はこれからも名もなき声の中から、できるだけ真摯にアンテナを張り巡らせて、その中にある名もなき声をちゃんと拾いたいと思います。

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――少し話は変わりますが、養子縁組の適正化及び促進のための「児童福祉法改正案」の議員立法化が民主党内にて了承されましたが、現状の児童福祉法で、養子縁組の際に弊害となるのは、どのような点だと考えていらっしゃいますか。

山尾:

児童虐待はみんな何とかなくさなきゃいけないと思っているんですけれども、実は1番多いのが0歳児0カ月なんですよ。特別養子縁組、「赤ちゃん縁組」という言葉を使いますけれども、「赤ちゃん縁組」で1番やらなくちゃならないことは、この0歳児0カ月の虐待児を減らすことだと確信しているから、私たちが真剣に取り組んでいます。今回、私が筆頭理事をやっている厚労委員会でも、児童福祉法の改正案が出ることになっているんですが、3月11日に政権与党は提出するということになっていたんですけれど、「間に合わなくて延びます」という連絡が来たんですよね。私が聞いている限りでは、改正案に「赤ちゃん縁組」の話は入ってこないんじゃないかということを危惧しているんですよね。それで、今「赤ちゃん縁組」というのは、それぞれの自治体やNPOが、法制度の裏づけがない中で、必死に結びつけをやっているんです。児童福祉法では担保されていないんです。児童相談所やNPOが自分たちの責任の中で、やってくださっているんです。だからやっぱり責任も過剰にかかっているし、予算の負担ももちろんほぼほぼ、その当事者たちに負担していただいているので、私たちは、児童福祉法の中に、この「赤ちゃん縁組」というものを財源と制度上で入れ込んで「国がちゃんとバックアップしますよ」としたい。今回は、閣法(内閣提出法案)には入って来ないようなので、議員立法で法案を提案していきたいと思っています。

 

保育の保証まで踏み込みたい

――女性が産後の社会復帰が心配で、なかなか結婚できない、子どもの育児が不安という方も多いと思います。産後の社会復帰を手助けする政策などは、現状どういったことをお考えですか。

山尾:

現政権は、お金を出して三世代同居を推進するということをやろうとしていますが、そこではないと私は思います。実際三世代同居ができるなら、それは産後の社会復帰にとってありがたいんですけれども、三世代で同居して、トイレとお風呂を2つずつ作れるお家には、国費がそれほど入らなくても、そうやって助け合って頂ければいいと思うんです。けど、本当に国費を使うなら、そこではなく、何度も述べていますが、保育士さんの給与に充てるべきだと思うんです。

もう1つ自分なりに次の目標で考えているのは、保育園の義務教育化となるかは別として、今の保育は、親が働いていて子どもの面倒を見られない人を保育しますよという話ですよね。それですら現状はやれていない。一方で、親が働いて面倒を見られるかどうかではなく、子どもも、何歳かを過ぎた時には、保育士さんを含めた乳幼児の専門家の手による保育・養育・教育を受けたほうがいいんじゃないかって考えていて、徐々に広まってきているんですよね。そういう意味では、親が面倒見られるかどうかに関わらず、保育を保証するということに踏み込んでいきたいという思いが強くあります。

他に、保育以外にも介護の給与アップというのもやっているんですが、保育も介護も全産業平均の月収の約9万円~10万円低いんですよ。そこには、「子どものお世話や年寄りのお世話は今まで主婦がやってきた仕事」という観念が横たわっていて、「多少低くてもいいんじゃないの」と思われていると思います。引き上げた方がいいけれど、「しょうがないよね」と。こういう固定観念が、国会の世界から、拭い去られていないような気がするんです。それを変えるには、女性の議員を増やすべきではないかと思います。保育や介護がどれだけ大変な仕事かわかっているのかということを、リアルに堂々と語れる議員が、どれだけ増えるか、早く増えるかというのは大事だと思いますね。

 

政治が動くというのを生で感じて欲しい

――どうすれば増えると思いますか。

山尾:

今回の「保育園落ちた」の話のきっかけを話すと、女子大生のインターン生たちに普段から予算委員会で取り上げる内容について意見を聞いているんですが、そしたらあの女子大生たちが、「山尾さんやっぱりこれですよ。『保育園落ちた死ね』ですよ」と。「やっぱりこれか」と、「そう思う?」って聞くと、「私たち本当に怒っている。本当にこんなんじゃ夢持てません」って。夢を紡ぐ子育て支援だけど、『夢紡げません』」みたいな話になって、それをきっかけに私は国会で取り上げました。そして、ネット上で人々が繋がって、政治を動かしている。彼女たちはそれを昨日までも見ていて、「あっ、自分たちの声も1つのきっかけとなって、なんか政治が動いている」と燃えているわけです。直接の答えになるか分かりませんが、若い人たちに政治の距離感を生で見てもらって、その中から、これから社会人になって、いい仕事して、彼氏と結婚して、子どもも産んで、頑張りたいぞっていう子たちが、政治家になっていくっていうのが、結局急がば回れだと思っているんですよね。実際この2週間とかで起きたことだから、このムードの中で、今日もテレビであのブログが紹介されて、みんなで見てて。先ほど野次をした議員生出演ということで、平沢勝栄さんが出て、「野次についてはごめんなさい」と。ただ、途中から平沢さんがおっしゃっていたのは、「ブログね。これ本当に女性が書いたんですかね、この言葉遣い」と言ったんですよ。みんな驚いて。政治が動くということと、それに対する感覚のずれとかに、みんなで叫んだり、拍手したりしながら一緒にやっているわけです。そういうことが若い人を動かして、中でも若い女の子たちを動かしていくんじゃないかなということは、生で感じていますね。

 

――最後に、子育て問題の当事者である若い世代はどうすればいいとお考えでしょうか。読者にメッセージを頂ければと思います。

山尾:

1票だけじゃ政治は変わらないと思われるかもしれないけど、その1票がないと政治は変わらないので、まずはやはりそこを、18歳選挙権の話も含めて、お願いしたいなというのはあります。今回の「保育園落ちた」の話で多くのメールが届いたんですが、その中に匿名の書き込みじゃないかという声もすごくあったんですよ。でも1票だって匿名です。1票の積み上げで政治はできているじゃないですか。その指摘もメールとかで私のところにきて、匿名の声、匿名の1票を政治家が馬鹿にしていいのかということを改めて思いました。やっぱり1票って重いんですよ。

あとは、選挙に行ってくれという話とは相反するような話なんですけれど、今強く危惧しているのは、最後は選挙、数の力なんだから、「選挙に行け」と。「そんなに文句があるなら自分が政治家になれ」とか、「投票に行け」とか、そういう文脈の中で、「デモなんて無駄だ」みたいなのが、政治の言論空間の中で、「直接政治に参加しなければ意味がない」みたいな主張があるような気がして。「そんなことないよ」というのを強く言いたい。全員が政治家にならないといけないというのはないし、政治家にならなければ政治について語っちゃいけないというのもない。投票はもちろん行ってほしいけれども、デモやネットで投稿するということも含めて、短い限られた時間の中で、何か自分の中でできることをやるという活動は、私はすごく大きいと思います。

 

山尾志桜里(やまお・しおり)

1974年生まれ。東京大学法学部卒。検察官を経て、2009年の衆議院選挙で初当選を果たす。2012年に落選するも2014年の衆院選で国政に復帰。

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