日本 経済

増税延期後に世界同時 財政出動か

Joseph_E._Stiglitz_-_cropped
Pocket

安倍政権が着々と消費増税延期に向けて動いている。2014年の自民党役員人事で財政再建論者の谷垣禎一氏が幹事長に起用され、黒田日銀総裁も「再増税しない場合のリスクが大きい」と増税延期はしないというムードが強かったが、今年に株安が続きムードが変わってきている。

安倍首相は今まで「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り、確実に実施する」としてきたが、先月末の答弁にて「世界経済の大幅な収縮が実際に起こっているか、専門的な見地の分析も踏まえ、その時の政治判断で決める」と発言。

また菅義偉官房長官も先月末「税率を上げて税収が上がらないようなところで、消費税を引き上げることはあり得ない」、「橋本総理大臣時代に税率を引き上げ、結果として税収が下がってきた経験がある」と発言し、増税延期の臆測が強まっている。

 

増税は適切なタイミングではない

そして、16日には「国際金融経済分析会合」でノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授が消費増税の延期や積極的な財政出動を提案した。

スティグリッツ氏は「2015年は金融危機以降、最悪の状況だったが、16年はさらに弱体化する。世界的な需要不足が加速している」と指摘。アベノミクスに一定の評価を与えつつ、「金融政策だけでは不十分。消費税は総需要を増加させるものではないので、引き上げは今のタイミングでは適切でない」と述べた。また、「総需要創出に向けた国際協力が大事だ。日本がG7議長国としてリーダーシップを発揮するよう期待する。日本は成長を引っ張る模範を示すべきだ」と、財政出動を提案した。

さらに、来週には同じくノーベル経済学賞受賞者で5%に引き下げるべきとも提案しているポール・クルーグマン氏が3回目の会合に参加する予定だ。これで「箔をつけ」増税延期はほぼ確実と見て間違いないだろう。

 

高まる財政出動すべきという声

だが、こうした世界的な需要不足、財政出動の必要性は世界中の専門家の間でコンセンサスが取れつつある。「もはや弾切れか?」Economist誌は最近、金融政策担当者たちにそう問いかけた。モルガン・スタンレー アジア会長スティーブン・ローチ氏は、日銀やヨーロッパ中央銀行、スウェーデン銀行を含む主要な中央銀行のマイナス金利政策を「無駄な」悪あがきであり、「次の危機の舞台」をお膳立てしたに過ぎないと批判している。

また、世界的な需要不足を改善するため、直接お金を配分する「ヘリコプターマネー」を推奨する声が高まっている。FT誌は度々ヘリコプターマネーを推奨し、米シンクタンク ブルッキングス研究所副所長のケマル・デルビシュ氏は成功のカギは世界同時の財政出動だと主張している。「各国の足並みをそろえて施策を適切なタイミングで行うことにより、世界規模での成長が見込め、また資本配分も改善され、公正な所得配分も促進されて行き、投機的バブルの起きる危険性は減る」と述べた(「ヘリコプターマネー」を実行すべきか?)。

そして、スティグリッツ氏が提案したように、G7が世界同時の財政出動に向けて議論される場となる可能性は高いだろう。

 

一方、公明党は衆参同時選挙に慎重な態度を見せている。公明党の石田祝稔政調会長は16日の記者会見で「衆院解散を結びつけるのは飛躍しすぎではないか」と牽制した。

ただ、ブルームバーグのインタビューで、井上義久幹事長は2016年度補正予算案の編成など追加の財政出動に踏み切る可能性について、与党として世界経済の動向次第では必要なら機動的に対応する考えを示した。消費増税については「全体として消費税を今、引き上げをやめなければいけないという状況にはない」としながらも、「経済がマイナスになって税収が下がったのでは意味がない」とも指摘した。

Pocket