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トランプ外交アドバイザーを発表。トランプ外交政策まとめ

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米大統領選・共和党候補ドナルド・トランプ氏は21日、外交政策に関するアドバイザーを発表した。名前が挙がったのは、ワリド・ファレス氏、ジョゼフ・シュミッツ氏、キース・ケロッグ氏、カーター・ペイジ氏、ジョージ・パパドプロス氏の5人。だが、これらの5人は専門家の間であまり知られておらず、政治メディアPoliticoやNew York Timesは「Who?」と言っている。

 

ネオコン派のアドバイザー

チームを率いるのは共和党のアラバマ州選出ジェフ・セッションズ上院議員。トランプ氏の国家安全保障チームの責任者に指名されている。

唯一、知名度のあるファレス氏は中東・テロリズムの専門家で、2012年の大統領選ではミット・ロムニー氏の安全保障問題アドバイザーを務めていた。多数の政府機関のコンサルタントを務めた経験があり、オバマ大統領の外交政策を批判している。また、故国レバノンで暴力的な民兵組織に長年関わってきた人物で(イスラエルの支援を受けた武装勢力)、反シャリア法(反イスラム法)運動にも関わっている。トランプ氏と同様に親イスラエル派。

 

シュミッツ氏は元国防総省監察総監で、米民間警備会社ブラックウォーターの幹部を務めたこともある。ブラックウォーターとは世界最強の傭兵企業とも呼ばれ、イラク戦争での民間人の虐殺、シリア反政府軍への軍事指導などに関わってるとされている。シュミッツ氏はブッシュ政権の国防長官ラムズフェルド氏のもとで監察総監を務め、イラク戦争を強く支持した。

またクルーズ氏に同様に「キリスト教至上主義者」(関連記事:トランプよりヤバい?トランプを追いかけるテッド・クルーズとは?)。

 

ケロッグ氏は2003〜04年のイラク戦争初期に駐留米軍の司令官を務めた人物で、元陸軍中将。

ペイジ氏はグローバル・エナジー・キャピタルの創業者。パパドプロス氏はエネルギー問題を専門とする弁護士で、すでに撤退したベン・カーソン氏のアドバイザーを務めていた。

 

こうしてみると、ネオコン派の傾向が強い。ただ本人らは今までの言動にも関わらず、国外への関与を弱めるとしている。しかし、今回のアドバイザー選定はあくまで支持を得るためのものであるかのように思える。実際トランプ氏もブッシュ政権のイラクへの介入を批判しており、「嘘つき」だと罵倒している。

一方、トランプ氏はネオコン派から支持を得られておらず、介入主義者でネオコンの代表的論者であるロバート・ケーガン氏が、トランプ氏は共和党が生んだ、共和党を破壊しかねないフランケンシュタインであり、「国を救うためにはヒラリー・クリントンに投票するしかない」とワシントン・ポストに寄稿している。

思想よりも支持を得るために言動を変える究極的なポピュリストであるトランプ氏にとって、アドバイザーもその一環であるかのように思える。そして日本として注目したいのは、「知日派」がいない点だ。

 

国内重視の外交政策

トランプ氏の一貫性という観点では、国内、特に中間層〜下層を重視しているということだ。経済政策では共和党の一般的な「小さな政府」とは異なり、インフラ投資、年金・医療制度の充実など、「大きな政府」路線を掲げている(関連記事:過激な発言が目立つトランプ、実際は何をしようとしているのか?)。

外交に関しても国内重視を掲げている。

すでに何度も語られているように、不法移民の流入を防ぐために、メキシコとの間に「大きな壁」を建てると発言し、その費用もメキシコに負担させるとしている。また国際紛争への介入も大幅に減らすべきだとし、駐留米軍の費用を日本や韓国により多く負担させることやNATOへの費用削減を主張している。

 

経済

保護貿易推進論者であるトランプ氏は中国や日本、そしてTPPに関してこう批判している。

ニューハンプシャー州の勝利演説では、「我々は中国と日本を打ち負かす。そしてメキシコも打ち負かす」、「米国民の職を奪っている日本と中国とメキシコから雇用を取り戻す」と主張、会場から拍手喝采を浴びた。

また、2014年にも自身のfacebookで「我々は日本に関税無しで何百万もの車を売ることを許してきた。なんとかしなければならない。我々は大きな問題を抱えている!」と発言。最近でも「中国やメキシコの工場からの製品に高い割合の関税をかける」と主張している。

 

TPPについては、「米国の産業への攻撃だ」と反対し、「日本と中国が不正なことをやって稼いでいる」と言っている(中国はTPPに参加していない)。

中国に関しては、米中貿易改革を公約の一つにも掲げており、「中国は米国の雇用とカネをかすめ取っている」と言い放っている。中国の人民元切り下げを止めさせ、環境基準や労働基準を改善させる。また知的財産保護やハッキングに対して厳しく対処する、としている。

 

安全保障

日米安保条約に関しては、昨年末に「誰かが日本を攻撃したら、我々はすぐに駆けつけ、第三次世界大戦を始めなければいけないんだろう?我々が攻撃されても日本は助けない。フェアじゃないだろ?これでいいのか?」と不満をぶつけている。また、日本や韓国が米軍の駐留経費の負担を大幅に増額しなければ撤退させると主張。「米国は強い軍事力を持った裕福な国だったが、もはやそうではない」と述べた。

中国と北朝鮮に対しては厳しく批判しており、「北朝鮮をコントロールしているのは中国だ。北朝鮮は中国なしには飯も食えない。北朝鮮の行動をやめさせるのは中国の責任だ」と批判。

さらに、日本や韓国が北朝鮮や中国に対抗するために核兵器を保有することは否定しない、としている。

一方、ISに対しても核兵器使用の可能性を排除しない考えを示している。また、サウジアラビアなどのアラブ諸国がISと戦うための地上部隊を派遣しないなら、そうした国々から石油を購入するのを取りやめることもありえると主張。サウジアラビアに対しては、「米国がタダで守っているのに、毎日何千億円も儲けている」と批判している。

 

キューバに関しては、関係改善に賛成の立場を取っている一方で、キューバの人権抑圧政策を強く批判、「関係改善はいいことだが、私ならオバマ大統領よりももっといい取引をしただろう」と述べている。

NATOに関しては、米国の負担ばかりが大きく、テロ阻止に焦点を絞った別の組織に置き換えた方がいい、と発言。ドイツのメルケル首相などの同盟国に対してもスパイ・監視活動をすべきだと主張している。

 

また、今回発表されなかったが、ロシアに関するアドバイザーには2014年まで米国防情報局長官を務めていたマイケル・フリン氏がついていると報道がされているが、フリン氏はシリア情勢に関してロシアやイスラエル軍経由でアサド政権に情報提供している人物で、トランプ氏がロシアに好意的な態度を取っているのはこれが理由だと思われる(関連記事:安倍政権はトランプが大統領になると予想?ー深まる日露関係)。

 

本当に実現できるとは思っていないが、影響は与える

このように今までの発言を見れば、過激な発言ばかりだ。本当に実現すれば世界は大きく変わるだろう。もはや崩壊すると言っても過言ではないかもしれない。しかし、彼の支持者も本当に実現できるとは思っていない。

彼らがトランプ氏を支持するのは、不満の代弁、従来のエスタブリッシュメント(主流派)への失望、そしてリーダーとしての期待が主な理由となっている。

本当にトランプ氏が共和党候補に選出され、本選でも勝利するかはわからないが、事実として共和党候補の中でトップを独走しており、人種、年齢問わず幅広い層から支持を集めている。必ずしも低所得者だけではない。その意味では、仮にトランプ氏が大統領に選ばれなくても、経済・外交政策に影響を与える可能性は高い。

そして、批判の矛先になっている日本は、どうすべきか。駐留経費の負担増を求められる可能性は十分にある。今までは米軍が守ってくれたが、自力で守らなければいけない時代が来るかもしれない。一方、集団的自衛権行使の一環として、諸外国への協力を求められる可能性もある。昨年の安保関連法案では建設的な議論が行われなかったが、ついに施行された本日、改めて日本の安全保障政策について考える重要性は増しているだろう。

 

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