ヨーロッパ 中東 安全保障

ベルギー同時テロは「イスラム国」衰退の証拠か?

hqdefault
Pocket

今月22日の午前(現地時間)、ベルギーの首都ブリュッセルの空港と地下鉄駅でテロが発生し、空港で14人、地下鉄で20人の計34人が死亡、重傷者を含め230人以上が負傷した(ベルギー公共放送)。

今回のテロについて、イスラム国(以下IS)を名乗る組織がインターネット上に犯行を認める声明を出した。昨年11月13日にフランス首都パリで起きたテロ後、ブリュッセルのテロ警戒レベルは直近まで3に引き下げられていたが、依然として警戒態勢は続いていた。そのような状況にも関わらず今回のテロを防げなかったことは、改めて国際社会にテロ、そしてISの恐怖を植え付ける形となった。

しかしながら、ISはフランスやベルギーなどヨーロッパでテロを起こすことに「成功」している一方で、シリア・イラクにおける支配地域では、同組織の勢力はますます弱体化している(関連記事:<ベルギー同時テロ>なぜヨーロッパで度々テロが起きるのか?)。

 

●シリア軍によるパルミラ奪還

シリアの国営メディアは今月27日、ロシアの支援を受けるアサド政権軍が同日午前、ISによって去年5月から支配されていたパルミラ遺跡を完全に奪還したと発表した。今回のパルミラ奪還は、昨年9月からロシア軍の空爆支援を得て攻勢に転じたアサド政権軍にとって、対IS戦では最大の戦果と言えるだろう。アサド大統領は、「パルミラ解放は重要な戦果」とアサド政権軍を称えている(関連記事:パルミラ奪還、しかし遺跡には大きな被害。一方、大きな役割を果たすロシア)。

 

●空爆によるISナンバー2の財務相殺害

今月25日、アメリカ国務省はISのナンバー2、また同組織の「財務相」と考えられていたアブドルラフマン・カドゥリ(Abd al-Rahman Mustafa al-Qaduli)容疑者を殺害したと発表した。またアメリカ国務省はISの化学兵器製造に関わっていた幹部を先月から拘束していることを発表しており、この幹部の情報をもとにして関連施設を空爆。アメリカ率いる有志連合は、IS幹部を標的にした作戦で同組織の中枢に確実に打撃を与えている。

アメリカ国務省は、この数か月における有志連合の攻撃によって10,000人以上のIS戦闘員を殺害、アブドルラフマン・カドゥリ容疑者を含む20人以上の幹部を殺害したと推定している。

 

●イラク軍によるラマディ奪還

昨年12月28日には、アバディ首相は28日、西部アンバル州の州都ラマディをISから解放したと宣言、約7カ月ぶりの奪還に成功した。アバディ首相は、2016年は最終勝利の年にするとも述べた。ISは、アメリカ率いる有志連合に2014年に軍事介入を強化した後、シリア・イラクにおける支配地域の40%を失ったとされている。

他にも今月10日には、ISの構成員2万2000人分の名簿がIS治安警察から持ち出され、英テレビ局スカイニュースに持ち込まれたと同テレビ局が伝えている。同時に原油などによる収入源は大幅に減り、IS戦闘員の報酬は半減、ソーシャルメディアのアカウント封鎖によって外国人兵士のリクルートも困難になりつつある。(関連記事:「イスラム国」はどのように誕生したのか?-設立から振り返る

 

今回のベルギーで起きたテロによって、取り締まりや警戒の強化にも拘らず、未だヨーロッパで多くの犠牲者を出すテロを実施する能力があることをイスラム国は示そうとしたと、一部の専門家らは指摘している。

しかしながら、今回の事件のような「典型的手段によるテロ」にイスラム国が訴えている姿は、彼らの支配地域が確実に侵食されており、前線から注意を逸らそうと必死になっているようにもまた感じられる。逆に言えば、この狙いから、有志連合への参加国を中心とする中東地域や、過激派思想が誕生しやすい国内問題(格差や差別)を抱えた国では、今後その狙いである恐怖心を煽るために同様のテロが頻発する可能性も否めない。

Pocket