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【児童福祉法改正案】保護から権利ベースの児童福祉へ(渋井哲也)

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政府は3月29日、児童福祉法改正案を閣議決定し、国会に提出した。今国会で成立の見通しだ。児童福祉の理念を「児童の権利条約の精神」を踏まえたものとし、児童は「保護対象」から「権利の主体」となる。虐待対応の強化もあわせて行う。

 

保護から権利へ

改正のポイントはまず、第一条の目的で「児童の権利に関する条約の精神」の文言が入った。これまでは「すべての児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない」と「保護対象」のニュアンスが強かった。しかし、今回の改正により、「権利」が強調された。権利条約の最重要なキーワード、「最善の利益」も入った。

 

権利条約をベースにするのなら、「意見表明権」などの諸権利をどのように保障していくかというシステムが必要になる。しかし、法文上は、明確な規定はない。第一条と合わせて読めば、児童福祉審議会が権利擁護の機能があるとも解釈できる。

「社会保障審議会児童部会」の「新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会」の報告(提言)によると、本来は、省庁横断的なシステムが必要だが、子どもの福祉分野に限定すれば、都道府県の児童福祉審議会を活用する、としている。つまり、監視システムとして期待されていることがわかる。

市町村が設置する要保護児童対策地域協議会では専門職(厚生労働省が政令で定める)を配置するなど、専門性が強調されている。児童相談所は都道府県や政令市に設置義務があるが、特別区にも設置できるようにする。人口20万人以上の中核都市も設置するように促す。さらには市町村には新たな支援拠点も設置することで、より専門性が高い虐待対応は児相が行うといった役割分担が可能となる。

 

児相はパンク状態

今回の改正は、これまでの「児童福祉観」を本質的に変えた。同権利条約は1989年の国連総会で採択され、90年に発効した。日本が批准したのは94年だ。2010年6月の国連子ども権利委員会の最終勧告では「同法が最善の利益の優先を十分に考慮していないことに懸念をもって留意する」とされていた。批准から20年以上が経ち、ようやく児童福祉にも権利条約の光が差し込んだことになる。

また虐待の相談件数が増える中で、児童福祉司が不足していることが指摘されている(関連記事:児童虐待を減らすために必要なこととは何か?)。無理心中以外の虐待死例を担当した児童福祉司の受け持ち件数一人当たりで、13年度は、「51~100件」が12カ所でもっとも多かった。平均事例数は109.1件。児相はパンク状態なのだ。もちろん、理念の普及しても、職員の血となり肉となるには時間もかかる。しかし、理念の変更と、人的な手当がなされれば、改善される方向には向かうことは間違いない。

 

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渋井哲也(しぶい・てつや)

栃木県生まれ。長野県の地方紙を経てフリーライター。子ども・若者の生きづらさ、自殺、自傷、依存、虐待の問題を主に取材。教育問題やいじめ、少年犯罪、性犯罪、性の多様性、ひとり親、東日本大震災などもテーマにしている。著書には『自殺を防ぐいくつかの手がかり』(河出書房新社)、『明日、自殺しませんか』(幻冬舎文庫)、『実録・闇サイト事件簿』(幻冬舎新書)、近著に『復興なんて、してません』(第三書館、共著)などがある。ツイッターIDは@shibutetu

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