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「パナマ文書」の衝撃、世界中の権力者のオフショア取引の実態が明らかに

https://panamapapers.icij.org/
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4日、法人税や所得税がほぼゼロのタックスヘイブン(租税回避地)への法人設立を代行するパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から膨大な内部文書が流出し、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が公開。政治家など140人以上が脱税目的などでタックスヘイブンを使い、巨額の金融取引を行っていたことが報じられ、世界中に衝撃を与えている。

 

流出したのは2.6テラバイトもの文書

今回「モサック・フォンセカ」から流出した文書は過去40年分の内部資料で、約1150万点にも達する。「モサック・フォンセカ」はハッキング攻撃による外部の仕業だとしている。

この2.6テラバイトもの文書はWikileaksよりも多く、違法性については今後の調査次第だが、より重要な意味を持つ可能性も高い。

 

http://panamapapers.sueddeutsche.de/articles/56febff0a1bb8d3c3495adf4/

 

今回流出したのは現職や元国家指導者12人を含む140人以上で、プーチン露大統領の関係者や中国の習近平国家主席、英国、パキスタンなどの首相の親族、ウクライナ大統領やアイスランドのグンロイグソン首相本人、シリアのアサド大統領、リビアのカダフィ大佐、エジプトのムバラク元大統領の家族や側近などの名前が挙がっている。また、FCバルセロナのリオネル・メッシ氏やすっかり汚職の常連となったFIFAの幹部も名前が挙がっている。

これに対し、英国や米国、ドイツ、フランス、オーストラリア、スウェーデン、メキシコなどの各当局は脱税疑惑の捜査に踏み出す構えを示している。

 

オフショア企業に資金を保有することは違法ではない

だが、オフショア企業に資金を保有すること自体は違法ではない。しかし、政治家が脱税目的で所得や資産を隠していたのは倫理的に大きな問題だ。リーマンショック以降、企業の税逃れに対する批判は強まっており、今回名前が挙がっていたキャメロン首相も税逃れを批判していたが、今回の流出は打撃となるだろう。また、経済的に低迷しているロシアでは、プーチン大統領の側近らのオフショア取引やローンが20億ドル(約2218億円)相当に上るなど、2年後に控えた大統領選への影響が予想される(プーチン大統領もオフショア取引を批判していた)。

アイスランドでは、首相に対し辞任要求が出ており、野党は不信任決議案を提出。市民も大規模なデモを展開している。

 

*人口約32万人のアイスランドでここまで多くの人々が集まっている

 

シリアや北朝鮮の武器購入の資金源に

さらに、習近平国家主席は中国国内で汚職撲滅に注力しており、その求心力には影響が出ると思われる。汚職などにより大規模なデモが起こっているブラジルでも政治家の名前が挙がっているが、ルセフ大統領が率いる労働党の議員は含まれていない。また、北朝鮮やイラン、ロシア、テロ組織などの経済制裁の対象となっている国・組織に資金を提供していた個人・団体の名前も挙がっている。ICIJのパナマ文書の紹介動画ではオフショア取引がシリアの空爆やロシアマフィアの資金源にもなっていると批判している。

日本に関しては、政治家など公職者の名前は載っていなかったが、約400の個人や企業の情報が載っているとされる。

 

オフショア取引の問題点とは?

このように世界中の政治家やセレブなどの資産が明らかにされた今回の流出だが、そもそも「オフショア取引」の問題は何だろうか。

オフショア取引とは、法人税や所得税がほぼゼロのタックスヘイブン(租税回避地)に資産を移すことで、脱税やマネーロンダリングに使われる。「オフショア」とは岸から離れた市場という意味で、国境を越えて資金運用を行う。外貨獲得のため、税金を安くして大企業や富裕層の資産を誘致しているタックスヘイブンとしてはケイマン諸島やモナコ、ドバイ、バージン諸島、香港、シンガポールなどが有名。

 

こうしたオフショア取引の最大の問題点は、税収が自国に入らない点である。巨額の利益を出しているAppleやGoogleなどはオフショア取引を行い、イギリスのスターバックスも税金を払わず一時期不買運動が起こった。また、匿名性の高さから犯罪組織のマネーロンダリング(資金洗浄)に使われ、問題が指摘されている。

さらに、今回のような公職者は特に問題がある。国民には増税や支出削減などを行う一方で、自分の資産は脱税しているからだ。

 


*どのようにマネーロンダリングを行っているのかを解説したGuardianの動画

 

一方、OECDは近年規制を強めており、不健全なオフショア取引を減らす方向に向かっている。

こうした流れの中で、今回世界中の権力者の資産運用の実態が明らかになったことは大きい。特に、経済的に困難な国民が多い途上国やロシア、中国などの指導者がどの程度収入があり、どう管理されているのか(きちんと税金を払っているのか)は今後もっと明らかにしていくべきであろう。

 

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