日本 経済

【4月18日の国会】TPP特別委が再開。議論の進展は・・・?

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18日、国会では衆議院TPP特別委員会が10日ぶりに再開された。8日の委員会で審議中断となる事態が発生し(関連記事:【4月8日の国会】審議中断となったTPP特別委。何があった?)、一部では今国会での法案成立の見送りも噂されたが、13日になって、自民党と民進党が15日に審議を再開することで合意。しかし、14日未明に発生した熊本地震の影響を受け、15日の委員会では審議入りは見送られていた。野党側は政府の情報公開が不十分であるとの追及を続けてきたが、再開後の委員会ではどのような議論がなされたのだろうか。本記事では、おおさか維新の会・下地幹郎議員の質疑とそれに対する答弁を中心に、特別委員会での議論を見ていきたい。

 

熊本地震への対応に集中すべきとの指摘も

最初に質疑に立った民進党・緒方林太郎議員をはじめとして、ほとんどの議員から熊本地震への政府対応についての質疑が中心になされた。また、今はTPP特別委員会よりも地震への対応を優先すべきとの指摘も多くなされた。民進党・緒方議員から、なぜこのタイミングでTPPの審議を進めるのかと問われた安倍内閣総理大臣は、懸命に災害対応にあたっている現状を説明した上で、「この委員会については議会にお任せをしているところでございます。TPPの協定及び関連法案につきましては、我々も重要だと考えております。どのような件についてどのように議論していくかということについては、国会においてお決めをいただき、私たちはその中において、国会において政府として説明責任を果たしていきたい」と答弁した。

最後に質疑を行ったおおさか維新の会・下地議員も、質疑の前半では災害対応について提案を行った上で、後半にはTPPに関するこれまでの審議や中身について意見を述べた。以下は、下地議員の質疑とその答弁からの抜粋。

 

TPPの交渉をただ単にやらせないための態度

おおさか維新の会・下地議員:

今日のこの委員会はTPP特別委員会なんですね。災害特じゃないんです。災害特を開いて、熊本・大分の震災のことについてもやるんですが、総理、このTPPの批准の問題、この国会で通すおつもりありますか。

 

安倍内閣総理大臣:

どの法案も政府案として提出をさせていただいた以上、成立を目指していきたいと、このように思います。しかしそれは国会がお決めになるところでありまして、十分な審議の後、審議が熟せばそれぞれ衆議院においても参議院においても議決をしていただきたいと思う次第ですが、しかしそれは急ぐとかそういうことではなくて、しっかりとした審議を通じて国民の皆様の理解を得つつ審議が終結することが望ましいと、このように考えております。

 

おおさか維新の会・下地議員:

総理は、このTPPで14兆円の成長、GDPを押し上げるということを言っておりますので、またこういうふうな交渉をしてきた過程の中で、日本が先に批准していくというのは大事だと思うんですね。私の考え方は、この災害は災害としてきちっと対応していくけども、このTPPの法案は、おおさか維新の会としてはしっかりと今国会で通して、自由貿易のあり方のメリットを得ていくというようなことをやっていかなければいけないんじゃないかと。また、本会議でも私が質問したように、安全保障の観点からもしっかりとこれをやることが大事だというふうに思っておりますから、ぜひ強い意志を持ってこの法案を通していくと、ぜひそのことをお願いしたいと思います。

この前、民進党がこの黒塗りの資料を見せて、これがない限り私たちは審議しませんって、20時間損しましたよ。審議してないわけですよ。19年ぶりに、テレビ中継の時に、自分たちのことだけ考えて、そのテレビ中継をやめて、私たち質問できませんでしたよ。委員長、1%の支持率で、リサーチセンターが調べたら、100万世帯ですよ。国会中継なんて3%だから300万世帯。お二人の方が出たら600万世帯ですよ。自民党と民進党だけ国民の前でテレビ中継をして、残りはやめるんですからね。こういうことを勝手にやっておいて、このTPPの法案を進めないようなことをやるっていうのはやっぱりおかしいと思うんです。

しかも、あなた方民進党、民主党政権下で、松本外務大臣とか玄葉外務大臣とか枝野経済産業大臣とか野田総理が、どういうことを言ってきたかということですよ。野田総理、平成24年1月27日、「TPP交渉における文書や情報の取り扱いに関するご質問をいただきました。一般に外交交渉において交渉相手国が非公開として提供している文書については、当該国の意向を尊重することは当然であると考えています」。その通りだよ。玄葉外務大臣もそう言ってますよ。「さらけ出さないところに交渉術というのが出てくる可能性が多くありまして、全ての情報を開示したら、それで交渉はうまくいくか、日本の国益を最大化できるのかといったら、必ずもそうでない場合が交渉に入ったら出てくるだろう。」というふうに言ってますよ。

こういうふうに、自分たちのこういうふうな時には相手のことを相当追及して、勝手に審議もストップさせると。それでいて、自分たちが政権の時には自分たちも出せませんと言う。これ、誰が考えてもおかしいんじゃないですか。私は、地元に行って色んな方に伺ったら、これ(黒塗りの文書を掲げる)を出さなければ審議ができないと。じゃあこれが出てきたら今の批准の内容が変わるかといったら変わらないんですよ。やっぱりこういうふうな、利己主義というかなんというか。これでもう3回目だ。1回目は、与党でもない野党でもないと言ったら、私たちのこの質問を切る。2つ目には、柿沢未途さんが、テレビ中継っていうのは相手のことを考えて時間を守るけど、7分間もオーバーして私どもおおさか維新の会の時間がテレビ中継でなくなる。今回もまた同じように、自分たちだけ質問して終わる。委員長、委員長にもちょっと文句言いたいんだけど、うちの丸山さんはちゃんと委員会に出てきて30分質問しましたよね。そうしたら丸山さんは質問したんだけど、テレビ中継の時はこの30分切られてるんですよ。あなたのやり方おかしいんですよ。こういうふうに、自分たちで退席した人は、テレビ中継の時もうやらすべきじゃないんですよ。1回ペナルティ与えるべきなんですよ。そういうことをやらないと、本当にダメなんです。総理、そういうようなことをやってるようではダメなんです。

本当に外交文書出したいんだったら、私たち沖縄の方が一番興味持ってるのは、鳩山政権の時に、県外国外と言いましたよ。県外国外と言った後に、9月の21日に日米外相会談やってる、岡田外務大臣です。それで、9月の23日も日米首脳会談やってる。11月には日米でまた、東京で首脳会談やってる。そして10年になると1月に日米外相会談やってる。こういう過程の中で、自分たちが県外と言ったことが、辺野古に変わった。どういう話し合いをしてきたのか。民進党がどういう話し合いをして、沖縄県民に嘘をついたことが外交交渉で変わったのか、総理出してくださいよ、それ、そんなに言うんなら。

 

安倍内閣総理大臣:

民主党政権下における普天間飛行場の移設問題に関する米国との交渉については、首脳・閣僚レベルのものも含めて、公開されてきていないと承知をしています。一般に外国との外交交渉については、その内容を公にすればその国との信頼関係が損なわれる恐れや、我が方の交渉の手の内を明らかにすることになる恐れがあることから、その内容を公にすることは適切ではないと考えております。したがって、現在も我々の政権ではございませんが、当時の民主党政権下で行われた米国との外交交渉の内容についても、公にすることは適切ではないと、このように考えております。

 

おおさか維新の会・下地議員:

これね、初めからわかってるんです。自分たちだって、政権をとって外務大臣もいて、こういう答弁してきた人が、人に対しては、他の政権になったら出しなさい出しなさいと言っているんですけど、出さないことをわかりながら言っているのは、理由があるわけよ。これは、24日に北海道の補欠選挙がある。京都の3区の補欠選挙がある。TPPの論議が進んで、支持を受けてる共産党は反対、民進党は賛成。そういうふうなことの矛盾が出てくることが嫌だから、国会審議をそうやってるわけですよ。党内だって割れるかもしれない。私たちからすると、いい加減なんですよ。誰が考えても、この文書が出ないだけで止まって、自分たちのことをやらないと。足立さんとちょっと違うのは論理構成が私は正しいってことなんですよ。私はそういうことを考えると、今のTPPの交渉をただ単にやらせないため。これをやることで、野党統一ということの矛盾が出てくるから、この審議はやりたくない。そういうふうな態度でしかないんですこれは。これは、総理、もうすこし委員長がしっかりして、こういうことはわかってるんだから、もう止めない。審議を止めない。総理はこうしたいと言ってるんだから。こういうふうに野党に引けをとってやるようなことはしないと。そういう気持ちを、委員長、ちょっと答弁してくださいよ。

 

西川委員長:

答弁する立場にありませんから、今日の2法案について、政府側に疑義をただしてしていただきたいと。ご発言は受け止めました。

 

おおさか維新の会・下地議員:

そういう意味でも、しっかりしてもらいたいということを、申し上げておきたいと思います。

 

もう少しポジティブな試算も可能

おおさか維新の会・下地議員:

それでTPPの話ですけど、政府が試算を2回やってます。これ見て頂くとわかるんですけど(パネル1を出す)、左側のところが25年の試算です。25年の試算は、輸入量が50.7万トンありますと。和牛が25万トンあります。ホルスタインが10万トンありますと。これが、その時の現状でしたね。その横は、関税が撤廃になった場合は、20トンぐらい輸入量が伸びて、和牛が10万トンぐらい減って、ホルスタインが0になって、それで3600億円の生産減になりますというふうに試算してるんですよ。そして今回の27年度の試算では、50.7万トンは米国企業がそのままで、そして和牛が25万トンになって、ホルスタインが10万トンになって、生産減少額が10万トン。こういうふうな試算をして、決して少なくならないんですよと、生産額はそこまで落ちましたよと、いう話なんです。

パネル1
パネル1

しかし、総理、考えてみてください。関税が38%から8%に下がって、アメリカの輸入牛が伸びないっていうのはおかしいでしょう。(パネル2を出す)しかし、私たちも、和牛もこれ25万トンですけど、総理が今言っているように、これからも外に和牛を出していこうっていう戦略をやってるわけだから、同じ25万トンっていう計算はおかしいでしょうって言ってるんですよ。総理が考えているように、好循環を作る。消費者にいけば、安くて、牛丼も250円になるかもしれない、というようなことが出てくるだろう、というふうになったらお金が出ない分だけ残る。生産者の方も、外に出すような形になってくると、産業が大きくなると。これが好循環の結果なんですよ。

パネル2
パネル2

最後のところを見ていただくと(パネル3を出す)、私が考えたら、和牛が今の25万トン、ホルスタインが10万トン、これで計算すると、6819億円と、これが農林省の試算です。しかし、和牛は、これだけ海外の人が和牛和牛と言ってるんで5万トン伸びますと。ホルスタインは、5万トンに下がりますと。10万トンから5万トンに下がりますといっても、7136億円、317億円プラス要因になるんですよ。だけど、総理のところの、今の政府の試算のあり方、和牛、鶏肉、豚肉、米って1個1個の試算ができてないんですよね。だから、私は、もう1回試算のやり方をしたら、今14兆円だとおっしゃってますけど、これだけでも300億円伸びるんですよ。だからTPPをやっていくと、私はもう少し、試算のやり方をポジティブに考えて、物事を作っていくというようなことをやれば、もっと国民にわかりやすい成長戦略が示せるんじゃないかと思うんですよね。今1個だけ説明しましたけど、これ1回全体で、こういうふうな成長戦略を見直して数字のチェックをしてみると。そういうことをやってみるべきだと思いますけどいかがですか。

パネル3
パネル3

森山農林水産大臣:

下地委員にお答えをいたします。先生の独自の試算を今お示しをいただいたところでございますが、いずれにいたしましても、ホルのオスをどう少なくするかというところが1つの課題だろうと思います。そのために、どう和牛ファンを増やしていくかというところが大事な課題だと思いますが、その方向に向かって政策を進めていることは間違いがありませんけれども、なかなか短期間にできる話でもありませんので、引き続き努力をさせていただいて、できるだけ輸出もしっかり伸びていくように、TPPの効果が出るように進めさせていただきたいと考えております。

 

おおさか維新の会・下地議員:

森山大臣、成長戦略と言っている以上は、もう少しポジティブに、生産減少額の計算ばっかりせずに、どうやって伸びるのかというのを示さないと、対策にならないです。そのことをしっかりやってもらいたい。森山先生の発言1つ1つは、天の上から山中先生見てますよ。攻撃的に農政を作るというようなことを、もう1回お考えいただきたいというふうに思います(ここで安倍内閣総理大臣総理が挙手)。総理、なんかありますか。

 

安倍内閣総理大臣:

それはまさに、下地委員が言われたように、攻撃的に考えていく。その際は、牛なら牛ということではなくて、和牛、あるいはホルスタインのオスをどうしていくかということも含めて、ブレイクダウンしたものにおいて、試算とは別でありますが、支援をしながら戦略をしっかりと考えていきたいと思います。特に、農林水産大臣からも答弁をさせていただきましたが、海外では和牛というのが大きなブランドになっております。和牛といっても、オーストラリア産和牛とか米国産和牛ということになっているんですが、やっぱり和牛は日本産の和牛が、さらに高いブランドとして確立されるように、我々は努力していきたいと。そのことによって輸出量も飛躍的に増やしていきたいなと、このように考えているところでございます。具体的には、ジャパンブランドを明確にするための和牛統一マークの活用、あるいは銘柄牛のブランドを守る地理的表示の登録の促進や、戦略的な検疫協議の推進など輸出の阻害要因の解消などの取り組みを着実に推進をしていく考えでございます。

 

おおさか維新の会・下地議員:

もう少し前進して、明るくなるような、そういうのやってくださいよ。生産減少額っていうのが初めから表に出てくるから、国民は元気なくなっちゃうんです、TPPにね。もう少しそのことをやっていただきたいというふうに思います。

(以下略)

この後、下地議員は普天間基地移設問題について追及し、質疑を終えた。

衆議院インターネット中継より)

 

下地議員からは、これまでのTPPの審議について民進党批判がなされた。選挙で勝つことが至上命題になってしまうことは制度上仕方のないことではあるが、たとえ主張が変わっても、それが国益にかなうのであればその姿勢を許容するという態度は、与党・野党そして有権者にも求められる態度ではないだろうか。

また、TPPについてよりポジティブな試算を出すべきではないかという提案がなされたが、これはどちらか一方ということではなく、楽観・悲観それぞれのシナリオで試算を出すべきであろう。試算には様々な仮定が置かれているため、その仮定についても適切かどうかの検証を今後進めていっていただきたい。

 

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