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【4月19日の国会】「TPPに聖域はあったのか」問われた特別委。

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18日に引き続き(関連記事:【4月18日の国会】TPP特別委が再開。議論の進展は・・・?)、19日の国会でも衆議院TPP特別委員会が開かれ、一般質疑が行われた。18日の委員会では、地震対応を優先すべきとの考えから、野党側からは地震対応に関する質疑が多くなされ、TPPについての議論は依然としてあまり進んでいない。そうした中開かれた19日の委員会では何が話されたのだろうか。本記事では、民進党・玉木雄一郎議員の質疑とそれに対する答弁を中心に見ていきたい。

 

答弁精査のため一時審議中断

この日の委員会では、TPPによる農業分野への影響や政府の農業政策に関する質疑が多く出た。公明党・岡本三成議員は、オランダの例を出しながら、これからの農業政策においては、マーケティング戦略を重視していくべきとの提言を行った。最後に質疑に立ったおおさか維新の会・丸山穂高議員は、農業分野における規制改革の必要性を説き、「農業生産法人の出資規制、そして売上高規制、これが非常に壁になっていて、農業分野の企業の進出だとか、イノベーションの促進の阻害になっている」と指摘した。

民進党・玉木議員は午前中に質疑に立ち、まずは耐震不足のため池の整備を政府に要求した。その後、国会決議で除外または再協議の対象とされることになっていた重要5項目594品目のうち、関税などの輸入の枠組み全てが「無傷」だったものはいくつか、と質問。しかし、森山農林水産大臣、石原TPP担当大臣からは明快な答弁が得られず、答弁内容を精査する時間を設けるため、一時審議が中断された。以下は、審議再開後の民進党・玉木議員の質疑とその答弁の全文。

 

聖域のうち無傷で守られたものはゼロ

民進党・玉木議員:

それでは引き続いて質問させていただきたいと思います。改めてお伺いいたします。いわゆる重要5項目、タリフラインに直しますと594、これが最新の数字だと思いますが、そのうち、関税の削減もしていない、関税の撤廃ももちろんしていない、いわゆる無傷と言われているようなものは、そのうちいくつあるのか、この点について改めてお答えください。

 

森山農林水産大臣:

委員長はじめ、皆様方には答弁精査のために大変ご迷惑をおかけいたしました。ご配慮いただきましたことに厚くお礼を申し上げます。

ご質問にお答えいたします。関税撤廃が原則というTPP交渉の中で、我が国は国会決議を後ろ盾に、交渉をいたしました。その結果、農林水産品約2割の関税撤廃を例外とできましたし、特に重要5項目を中心に、コメや麦の国家貿易制度や豚肉の差額関税制度などの基本的な制度を維持するとともに、関税割当やセーフガードの創設、長期の関税削減期間を確保できたところであります。関税に変更を加えたものについても、一つ一つ影響を精査して交渉しており、全体としての影響が出ないように措置できたのではないかと考えています。例えば、コメの調製品について言えば、ビーフンについて11年目に関税撤廃をいたしますが、国産米を原料として国内で製造している製品は元々限定的であることから、輸入が増加しても国産品への影響が見込まれないと整理をさせていただいております。

先ほど精査中とお答えを申し上げましたことについて少し説明をさせていただきたいと思いますが、我が国の譲許表でWTOの水準に沿うもの、すなわちTPPでは変更を加えなかったものを単純に数え上げれば、重要5項目594ラインのうち、155ラインでありました。このように、先ほど申し上げましたように、一品目一品目慎重に取り扱ってきたことは評価をしていただけるのではないかと考えておりますが、強いて単純に、枠内税率も枠外税率も変更を加えていないものが、あったかなかったかと問われれば、それはないというふうに考えています。

 

民進党・玉木議員:

重大な答弁をいただいたと思います。午前中からこれを端的にお答えいただければと思っていたんですが、もう一回整理しますね。重要5項目、国会決議で、本来であれば除外または再協議にするということでありました。除外または再協議になっているものが、この5項目のタリフライン、全部で言うと594のうち、いくらが除外・再協議の対象になっていますかとまず聞いたら、石原大臣から、そもそもTPPにおいては除外や再協議というカテゴリーがないので、判断あるいは答弁できないという話でありました。それもちょっとどうかなと。それであれば除外または再協議はゼロと答えるのが普通かなと思うんですが、定義できないということなので、あえて少し日本語を訳しまして、従前通りと、つまりこの協定の発行前と後とで全く関税等が変わらないものはいくらあるのかというふうに聞いたら、答えがすぐに返ってこないで、止まって、そしてこうして再開をしたということであります。改めてそのことをお伺いしたら、今、まず前段で森山大臣がお答えになったのは、重要5項目のタリフライン594のうち、単純に維持されているものを足しあげると、155でありました。ただ、追加で大臣からご説明があったように、実はこれはコメが典型でありますけれども、コメも確かに枠外の関税は今までと何も変わりません。ただ、枠内については、TRQとよく言われる関税割当ということで、枠内は関税がかなり下がったり、あるいは無税になったり、一定の数量まではほぼ関税がかからない形で国内市場にアクセスできるということ。これが、枠の外と中のものが仮に同じ品目であっても、番号は別のものをつけているので、枠外だけとって見れば完全に守られたふうに見えるんだけれども、コメと精米ということで言えば、違う番号のついた一部のものが明らかに穴が空いているということですので、後半正直にお答えいただいたのは、そういうある種タリフラインとしては形式上守られていたとしても、品目で言えば守られているものは一つもないと、無傷のものは一つもないというのがお答えでありました。

ということは、重要5項目、これをしっかり守ろうという形で交渉をされてきたんだと思いますけれども、結果として、2つのことが今回明らかになったと思います。1つは、重要5項目、タリフラインで言うと594ありますけれども、いわばこの聖域のうち、重要5項目を聖域と呼ぶのであれば、聖域のうち無傷で守られたものはゼロということであります。もう1つは、この間のやりとりで、ずいぶん時間がかかりました。594のうち、完全に守りきれたものはどれだけあったのか。これ重要5項目を守ろう守ろう守ろうと言ってもし交渉してきたのであれば、それが仮に1桁であろうが少ない数であろうが、ここだけはなんとか死守しましたというのは常に頭に入って、いつでも答えられるものだと私は思っていました。しかしそれが精査しないとそもそも数字が出てこないということは、重要5項目を守る熱意や誠意がそもそも乏しかったのではないかと疑わざるを得ないということであります。大変ある意味残念でありまして、形式的に言えば、今の答弁を総合すると、やはり国会決議は守られていないと結論付けざるを得ないと思っています。

もう時間がないので次の福島議員に譲りますけど、石原大臣に最後お伺いしたいのですが、午前中のやりとりの中で、170については、この重要5項目の中で関税撤廃になってしまったと。本当に守られるものがまずなかったということに加えて、重要5項目のうちでも関税撤廃せざるを得なかったものが170あるということでありました。これ、重要5項目にもかかわらず、なぜ撤廃したのか。そして撤廃した理由を教えてください。

 

石原TPP担当大臣:

先ほど私が申しましたのは、重要5項目の数字を持ち合わせておりませんので、それ以外の全体の数字の中でその数字をお示しさせていただいたということでございますので、若干数字の行き違いがあったのではないかと思います。

(答えになっていないとの指摘があり、再度石原TPP担当大臣が答弁に立つ)

石原TPP担当大臣:

先ほどお話をさせていただきましたのは、先ほどもご答弁をさせていただきました通り、重要5項目の数字がございませんで、関税撤廃の例外とされた459ラインの内訳が4つのカテゴリーに分類されていて、その一部が、例えば税率が維持されたものが159、およそ160であるというような話をさせていただいたということでございます。

(答えになっていないとの指摘があり、一時速記が止められた上で再度石原TPP担当大臣が答弁に立つ)

石原TPP担当大臣:

先ほどもご答弁させていただいたと思うんですけども、影響が極めて少ないであろうと、そういうものが撤廃ということになったと承知をしております。

 

民進党・玉木議員:

改めて質問します。完全撤廃になったものが170であるということはちょっとこれも事実確認として教えていただきたいのと、重要5項目にもかかわらず撤廃に至った経緯、理由を教えてもらいたいんですね。なぜ石原大臣に聞いてるかと言うと、これは厳しいけど譲って、でもその代わり他の自動車でこれを取ったんだ、これは農林大臣ではなくて全体を見たTPP担当大臣しかたぶんお答えいただけないので、あえてお伺いしてるのは、重要5項目、本来なら全部守って欲しかった、この594タリフラインのうち、170は撤廃です。全く残してない、関税が残らない、それが170あるんですけども、それを重要5項目にもかかわらず削減してしまった訳を教えてください。

 

石原TPP担当大臣:

先ほどの午前中の私が持っている資料の中に、重要5項目の594ライン、そのうち関税を残すものが424という数字を持ち合わせていなかったことは申し訳ないと思ってます。今その数字を確認しておりますので、それの差がいわゆる委員のおっしゃる170であって、私はその全体の農林水産物の方の差を言っておりましたので数字に開きがあるということはぜひご理解をいただきたいと思います。

そして、委員のご質問でございますけれども、先ほども影響が少ないという形でご答弁をさせていただきましたけれども、輸入実績の小さいもの、これも確か農林水産大臣がご答弁されたと思いますけども、ヨーグルトとかそういうものとかですね。あるいは、これも農林大臣がもうすでにご答弁をさせていただいておりますけども、代替性が低い、こういうものを、先ほどの引き算でございますけども594から424を引いた、170ラインを撤廃することとした基本的な考え方であると承知をしているところでございます。

 

撤廃された170ラインのうち、輸入実績がないものは半分以下

民進党・玉木議員:

最後、これ農林大臣に聞きます。170のタリフライン、これを撤廃しました。このうち、輸入実績がゼロのものは、うち、いくらありますか。

 

森山農林水産大臣:

玉木委員もご理解をいただけると思いますが、170のラインにつきましては、先ほども申し上げましたように、輸入実績が小さいもの、もう一つは国産の農産品との代替性が低いもの、牛タンとかそういうものがあると思いますが、あと関税撤廃がかえって生産者のメリットになる、例えば牛等なんかの場合はそういうことが言えるのだと思うんですけども、そういうものが実は170ラインということでございます。170ラインのうち、輸入が少ないものというのは大体100ライン前後ではないかというふうに思っております。重なる部分があるものですから、なかなかそこを特定して数字を申し上げることが無理ですけれども、一定の基準を設けて仕分けをしようとおっしゃれば、170ラインについては今申し上げたカテゴリーの中でどれぐらいのラインだというのは申し上げることができると思いますが、重なる部分がございますので、そこはぜひご理解をいただきたいと思います。

 

民進党・玉木議員:

これでそろそろやめますけど、重要5項目っていうのは、国会決議を守れば本来全部守らなければいけないんです。にもかかわらず撤廃したら、なぜ撤廃したかをより高い説明責任がこの170ラインには求められるんです。今、石原大臣からもあったし、森山大臣からもあったように、私もたぶんそうかなと思っていて、輸入実績のないもの、これも2つも理由でないのでしょうけど、そもそもニーズがないからないのと、あまりにも関税が高くて、壁が高すぎて入ってこなかったという両方あるので、国内の影響は慎重に見定めなければいけません。ただ、輸入がないか、あるいは少ないということで説明いただいたので、その少ないっていうのは人によって何をもって少ないっていうのは色々あるので、ないものを少なくとも170ラインでいくらあるんですかっていうのは、昨日の夜から聞いてますこれ。そもそもこんな分析もせずに170ライン撤廃してしまったんですか。驚きですよ。答えられますか。

 

森山農林水産大臣:

全く輸入がないものは、2010年で56ラインです。ですから、どこまでを低いものとするかという基準の問題もありますので、そういうものを含めて170ラインと申し上げているところでございます。全くないものは2010年では56ラインでございます。

 

民進党・玉木議員:

それも驚きなんですけど、170のほとんどが輸入実績がないから撤廃したのかと思いきや、170のうち全く輸入実績がないのは、実は半分以下の56なんですね。少ないものというのも、今大臣自身がおっしゃったように色々定義があるので、一回これ整理して、出していただけませんか。先ほどあったような、155ですか、単純計算したら従前通りという155の内訳、そして4分類あるという話もありました。一回この、守るべき対象であったタリフライン、重要5項目の594について整理をして出していただきたいと思いますし、そのうち撤廃した170については、詳細に、1ラインごと、どういう理由でそれを撤廃したのか、輸入実績はゼロなのか、少ないのか、少ないのは何を意味するのか、代替性はどうなのか。今、一般論で説明していただいているやつを、きちんと整理して出していただくこと、このことを、委員長、強くお願いしたいと思います。

 

西川委員長:

ただいまの件につきましては、後刻理事会で協議いたします。

 

民進党・玉木議員:

重要5項目、実は無傷のものがゼロだったということが明らかになりましたので、それを踏まえて、また同僚議員がこれからの議論を深めていくこと、そしてまた私もこの点、さらに追及していくことを申し上げまして、質問を終わりたいと思います、ありがとうございました。

衆議院インターネット中継より)

 

玉木議員が追及したように、一部で関税撤廃の例外が認められているといえども、国会決議は守られていないと言わざるを得ない。このことをもって、TPPの批准には反対という意見が出るのもうなずける。一方で、政府は、関税が撤廃されても適切な対策をとれば問題ないとしており、その主張の検証もなされるべきであろう。たとえ聖域が守られていなくとも、適切な対策を取れば国益の最大化につながるというのは、十分あり得る話である。

TPPの承認案と関連法案は、今国会での承認・成立は見送られることとなったが、引き続き徹底した議論を行っていただきたい。

 

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