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【4月20日の国会】焦点となったTPPの「聖域」。政府の見解は?

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18日に再開された衆議院TPP特別委員会は、20日も国会で開かれ、一般質疑が行われた。19日の同委員会では、除外または再協議と国会決議で定められていた重要5項目が守られていなかったとして、民進党議員が政府を徹底追及する一幕があったが(関連記事:【4月19日の国会】「TPPに聖域はあったのか」問われた特別委。)、一夜明けた20日の委員会ではどのようなやりとりがあったのだろうか。本記事では、公明党・中川廉洋議員の質疑とそれに対する答弁を中心に、重要5項目についての政府の見解を見ていきたい。

 

関税に変更を加えなかったかどうかだけでなく、総合的に判断すべき

最初に質疑に立った自由民主党・福山守議員は、重要5項目についてどれだけのラインが守られたのかと質問。それに対し森山農林水産大臣は、重要5項目424ラインが守られたと答弁した。さらに、森山大臣は、「政府として、あくまで関税に変更を加えなかったかどうかだけで、守ったかどうかを判断するのではなく、関税割当の削減や関税削減に留めたものも含め、農林水産物の459ライン、うち重要5項目の424ラインを関税撤廃の例外として影響を最小限に留めたことを踏まえ、総合的に判断すべき」との認識も示した。

福山議員に続いて質疑を行った公明党・中川廉洋議員も、この重要5項目が守られたとする、政府見解の具体的な中身について述べるように求め、ビーフンやキャッサバ芋の例が森山大臣から示された。以下は公明党・中川議員の質疑とその答弁の全文。

 

一つ一つのタリフラインを精査し、全体として影響が出ないように措置

公明党・中川議員:

おはようございます。公明党の中川康洋でございます。皆さん、この委員会にお戻りいただきましたので、安心して質問をさせていただきたいと思います。大変ありがとうございます。

冒頭、私からも、今回の熊本県地方での地震でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りさせていただきますとともに、ご遺族、ご家族、またお怪我をされた方々、さらには今も困難な生活をされておられる皆様に心からのお見舞いを申し上げさせていただきたいと思います。

今日は主に、重要5項目を中心に、その関連内容も含め、何点かお伺いをさせていただきます。政府はこの重要5項目について、厳しい交渉の結果、全体を守るという観点から、約3割の品目、厳密には2割8分ですが、この3割の品目について関税撤廃をされたと聞いております。私はこの約3割という数字が、その品目の種類など、具体的な説明もなしに今後一人歩きをすると、生産現場などは、その数字そのものに不安を感じてしまうのではないかと危惧をいたしております。政府は今回の交渉の中、この重要5項目全体を考えて、生産者や市場に極力影響が出ないように、個別に判断をされてきたものと思いますが、ここでは少し具体的な内容について、 森山大臣にお伺いをいたします。

大臣は、昨日の答弁の中で、今回関税撤廃の対象となっておりますビーフンを例に挙げられまして、このビーフンについては、関税を撤廃しても、国産米への影響は見込まれない、と答弁をされております。たしかに、主にインディカ米で作られておりますこのビーフンについては、日本で主食とする習慣はなく、国内需要は極めて低いと思われますが、大臣は昨日、どのようなお考えから、国産米への影響は見込まれないと答弁をされたのか、具体的な数字を挙げてその理由をご説明願います。
森山農林水産大臣:

中川委員にお答えを申し上げます。ご指摘の通り、重要5項目につきましては、全体のライン数594ラインのうち、424ラインを関税撤廃の例外として、残りの170ラインは撤廃をしております。ただし、それは、タリフラインごとに一つ一つ精査を行いまして、国内生産への影響という観点から、影響が少ないものに限定をして判断をしてきております。

具体的には、3つの基準をもとに判断をいたしました。1つは、カッサバ芋、非処理ヨーグルトなど、輸入実績が少ないもの。牛タン、ビーフンなどの国産農産品との代替性が低いもの。3つ目は、関税撤廃がかえって生産者のメリットとなるもの。この3つを基準にして判断をしたところでございます。ご指摘のビーフンにつきましては、元々関税率も高くないこと、11年と比較的長期を経た撤廃であること。特定の料理に利用する食材でありますので、主食用米との代替性が低く、今後国内需要が大きく増加することは想定をされないこと。国産米を原料として国内で製造している製品は、元々限定的であること等から、輸入が増加する等の影響や国産米の生産への影響は特段見込まれないと考えております。このように、一つ一つのタリフラインを精査をさせていただきまして、全体として影響が出ないように措置しているところでございます。
公明党・中川議員:

ありがとうございました。先ほどの大臣からの答弁にもありましたように、ビーフンの例を挙げていただきましたけども、この重要5項目の中には、タリフラインで594品目ですけども、仮に関税撤廃となっても、この関税となったのはタリフラインで170品目と答弁をいただいたわけですが、その品目の性質上、例えば貿易そのものになじまないものでありますとか、これまで輸入実績がほとんどないもの、そういったことによって、国内の生産現場や市場にほぼ影響を及ぼさない、こういったものが多く含まれているというふうに聞いております。先ほどの大臣の答弁の通りでございます。ぜひせっかくの機会でございますので、そのような品目の、具体的な例を国民の皆様にわかりやすく、こういったものがさらにあるんだよ、こんなところを少しご答弁いただけますでしょうか。
森山農林水産大臣:

お答え申し上げます。例えば、甘味資源作物のうち、カッサバ芋につきましては、11年目に関税を撤廃するということになっております。カッサバ芋をでんぷん原料として輸入し、国内ででんぷんに加工すると、高コストとなりますので、経済合理性がないことから、近年、TPP参加国からの輸入の実績はありません。また、乳製品のうち、非処理ヨーグルトにつきましては、11年目に関税を撤廃するということにしておりますが、非処理ヨーグルトは、減菌、冷凍等の保存処理がされておりませんので、長期間の輸送が困難であることから、TPP参加国を含め、近年、輸入の実績がありません。以上でございます。
公明党・中川議員:

ありがとうございます。その通りだと思うんですね。今、大臣は、キャッサバ芋、大臣はカッサバ芋とおっしゃいましたけども、私はキャッサバ芋かなと思っているんですが、その例でありますとか、非処理ヨーグルト、これ輸入実績がないんです。そういったものもこの170の品目の中には入っておりまして、そういったところをしっかりと見極めながら、今回交渉していただいたのかなと私は感じるところがあるわけでございます。一昨日あたりから、この委員会では、例えば除外とか再協議とかいう言葉が飛び交っておりますけれども、今回の交渉結果で大事なのは、コメなど重要5項目が、引き続き再生産可能となるような結果や状況をいかに作り出すか、さらには作り出していくか、これが私は大事だというふうに思っております。TPP協定は、相手国がある交渉ごとでありますから、最終的には国内に影響が出ないように、また、実害が極力出ないようにすることが重要でありまして、具体的には、単に形をとるのではなくて、実際に実を取ることができるか、また取ったのかということが私は大事だというふうに思っております。そのような意味から考えますと、先ほど大臣が挙げられた具体的な例などは、実際に実を取った形として評価できますし、今回我が国は、相当な努力の上で交渉を成し得たなと私は感じているものでございますので、そのことを皆様にお伝えをさせていただきたいというふうにも思っております。

 

既存施策を含め、不断の点検、見直しを行っていく

公明党・中川議員:

次に、重要5項目に対する国内対策と予算についていくつかお伺いをいたします。政府は昨年10月のTPP交渉の大筋合意を受けて、11月25日に、総合的なTPP関連政策大綱を決定するとともに、平成27年度の補正予算では、3124億円のTPP対策予算、これを組まれております。しかし、大臣、大事なのはこれからでありまして、この政策大綱の中身や予算など国内対策が、重要5項目を中心に今後現場でどのように機能していくのか、これを注視していかなければなりません。そこで伺いますが、政府としては、この政策大綱に掲げた主要施策や予算については、例えば決めたから終わり、さらには付けたから終わり、ではなくて、今後それぞれの対策について、不断の見直しを図り、また政策効果を見極めながら、その対策の有効性や妥当性を検証していくこと、これが大変に重要であるというふうに思いますが、大臣のご答弁を願います。
森山農林水産大臣:

中川委員にお答えを申し上げます。現在、農林水産省におきましては、行政機関が行う政策の評価に関する法律等に基づきまして、各施策・事業について、あらかじめ目標を設定した上で、その達成状況を把握し、外部有識者による意見を聴取するなど、客観的な評価を実施し、その評価結果を予算の概算要求や執行等に反映させる仕組みをとっているところでございます。TPP対策については、生産現場の懸念と不安をきっぱりと断ち切るとともに、農政新時代を確実に実現するものとなるように、その実行に万全を期すことが不可欠であると考えております。そのために、政策大綱において、効果的・効率的に実現するという観点から、定量的な成果目標を設定し、進捗管理を行うとともに、既存施策を含め、不断の点検、見直しを行うこととしているところでございます。その効果が十分に発揮されるように、この仕組みをしっかりと実行して参りたいと考えております。
公明党・中川議員:

ありがとうございました。農政新時代に向けて、息の長い対策でございますので、常に見直し、検証、さらには妥当性、これを図っていっていただき、さらにはその内容をブラッシュアップしていっていただきたいというふうにも思っておりますのでどうぞよろしくお願いを申し上げます。

次にこの国内対策における協議の場の設置、これについてお伺いをいたします。今回の重要5項目についての交渉結果の中には、例えば牛肉の16年など、これから長い期間をかけて関税が引き下げられていくような品目がございます。また、今後の生産現場の状況は、時々刻々と変化をしていくというふうに私も考えておるところがあり、またその可能性もあるというふうに思っております。故に、政府といたしましては、これらの変化に今後も遅滞なく対応し、これまで以上に生産現場の状況を的確に把握するためにも、私は今回のTPP協定を機に、政府と生産者団体の定期的な協議の場、これを設置をするべきではないかというふうに思っておりますが、大臣のご見解を伺いたいと思います。
森山農林水産大臣:

中山委員のご指摘の通りだと思っております。農林水産省では、日々の業務の中でも、関係団体と情報交換や意見交換を行うほか、平素からお互いに問題意識の共有を図り、連携を強化するために、昨年10月から農林水産関係団体と、農林水産省との定期的な意見交換の場を設けたところでございます。今後、TPPの国内対策の実施にあたっては、このような関係団体との定期的な意見交換の場をはじめ、地方参事官の活用も含めて様々な機会を捉えて、現場のニーズの把握に努め、きめ細かな施策の展開を図って参りたいと考えております。
公明党・中川議員:

今の大臣のご答弁を聞きましたら、生産者団体の方は一定程度安心したというふうに思います。やはり状況は時々刻々と変化をしていくんです。その変化に対して、適切な対応をしていかないと、やはりもう手遅れになるということもあると思うんですね。そういった意味においては、定期的に協議の場を持ちながら、政府がしっかりとその情報をキャッチしていく、そしてそれに対応していく、こういった体制をお作りいただきたいなというふうにも思っておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

次に、TPP対策予算の基金化、これの政策目的と、その効果、さらには予算の継続性について、ぜひともお伺いをいたします。今回のこのTPP対策の補正予算では、これまでの畜産クラスター事業だけではなく、今回新たに産地パワーアップ事業での新たな基金化など、合計、私が読める限りでは、6つの事業が基金として造成をされております。私は今回の重要5項目などの国内対策が、今後も息の長い対策であることを考えると、今回の多くの事業が基金化されたこと、これについては評価をさせていただいておる一人でございます。そこで改めて伺いますが、今回のこのTPP対策予算の基金化の政策目的とその目指すべき効果についてお伺いをしたいというふうにも思っておりますし、さらには、この5項目に対する国内対策、これは先ほども述べたように息の長い対策であること、これはもう必然であるために、その予算については今後も継続性をもって十分に措置されていくこと、これが私は必要であると思っておりますが、大臣のご見解を伺いたいと思います。
森山農林水産大臣:

中川委員にお答えをいたします。TPP関連対策におきまして、産地パワーアップ事業や畜産クラスター事業など、7つの事業につきまして、基金を設けさせていただき、事業を実施することといたしました。平成27年度補正予算におきまして、7つの事業で1763億円の基金化を図ったところでございます。これらの事業につきましては、機動的・効率的に対策が実施されることにより、生産現場で安心して営農等ができるように、弾力的な執行が可能となる基金化を行っているところでございます。農林水産省といたしましては、TPP関連対策について、今後とも事業の着実な推進を図っていくこととしております。その財源につきましては、既存の農林水産予算に支障をきたさないよう、政府全体で責任をもって毎年の予算編成過程で確保するものとするとされているところでございますので、現場における要望をしっかりとお聞きしながら、必要な予算の確保に努めて参りたいと考えております。
公明党・中川議員:

ありがとうございました。今回のTPP対策、単年度で終わる内容なんてほとんどないわけですね。そういった中で、畜産クラスター事業、これは以前から基金化されてまして、非常に人気の高い事業だったわけです。そこから、今回産地パワーアップ事業なんかも新たに基金化をされて、6つの事業が基金化されているわけです。一般的にこの国会では、基金については様々なご意見があるわけですが、私は今回のTPP対策については、基金にする、やはり補助金とか補正予算ですと、単年度ですし、すぐに申請しろとか内容を決めろ、みたいなことがあるわけです。基金ですと、経年的に安心した対応ができる。さらには、継続的な対応ができる。また、変化に着実に対応していける。こういった意味において、基金を積みすぎてるんじゃないかとかそういった意見はありますけども、そこも的確に判断をしながら、現場が使いやすい、こういった状況の予算化、さらには継続性をもってそれをしっかりと担保していく。このことを、大臣の陣頭指揮の下、現場の皆さんが安心するような仕組みをお作りをいただきたいというふうにも思っておりますので、この点についても、ご要望をさせていただきたいと思います。

 

再協議をしたとしても、日本の国益を害するようなことは行わない

公明党・中川議員:

最後残された時間、石原大臣にお伺いをしたいと思いますが、TPP協定の第2章、物品市場アクセスの附属書2-D、これ関税に係る約束におけるところですけれども、ここに再協議規定の考え方が入っております。この附属書には、7年目以降および第三国とのFTA締結による再協議規定というふうに示されておるわけですが、この7年目以降の再協議につきましては、我が国と豪州、カナダ、チリ、ニュージーランドおよび米国との間で相互に規定をしておりまして、これはもう明確であるわけです。次の第三国とのFTA等を締結した際とのこの表記、これ少しわかりにくいところがあるんですけども、私が資料を見た中で該当するもの、考えられるものは、例えば日EU・EPA、さらには日中韓FTA、さらには現在交渉しておりますトルコとかコロンビア、こういったところとの交渉が該当するのかなというふうにも思っております。私は、この再協議規定については、間違っても譲歩を前提としたものではないというふうにも思っておりますし、この規定を含めて考えても、今後の国内における特にこの重要5項目の持続的な再生産は大丈夫であるというふうに捉えておりますが、この再協議規定に対する我が国の考え方と、重要5項目を今後も守り続けるという我が国の強い意志を確認したいと思いますので、石原大臣、どうぞご答弁を願いたいと思います。
石原TPP担当大臣:

まさに中川委員が御指摘された通りだと私も認識をさせていただいております。新たにFTAを結んだ時との関係はこれまでここの委員会でも議論になっておりません。初めての論点でございますので、若干ご説明をさせていただきたいと思うんですけれども、関税撤廃に合意しております品目については、物品貿易章、2章でございます、に要請があれば撤廃の時期について再協議するとの規定がございます。ただしその規定は関税撤廃に合意している品目のみに関するものとなっております。一方我が国は多くの品目につきまして、これまで中川委員と農林水産大臣との間でご議論いただいたようなものにつきましては、関税撤廃の例外となる措置を確保させていただいたところでございます。そうした関税撤廃の例外は第2章の第4条における、再協議の対象にはならない、これがまさに委員のご指摘の通りであるということの裏付けであります。

そして次の話でございますけれども、そうした事情から関税撤廃の例外となる措置についても7年目の再協議、そして第三国とのFTA締結後に相手国からの要請に基づき協議を行うことに合意した国との間で、再協議の規定を相互に設けることと、こういうふうに解釈をさせていただいたことでございます。TPP交渉はご存知の通り関税だけではなくて、多くの分野で同時並行的に審議をやって参りました。全体を通じたギリギリのバランスのところで、今タリフラインの話もされておりましたけれども、ギリギリのところで国益を確保するという形でまとまったわけでございます。従いまして、再協議をしたとしても、そのバランスが崩れてしまったら協定自体が優位性を保てなくなる、日本の国益を害するようなことは行わない、まさに委員がご指摘の通りだと、私どもも政府として理解をしております。
公明党・中川議員:

ありがとうございました。今回は、様々な具体的なところを各大臣にご答弁をいただきました。この委員会の審議が、生産者の皆様にとりまして、また国民の皆様にとりまして、より安心が広がるような、そういった議論をしていくことが私はこれからも大事だというふうに思っております。公明党は、これからも生産者の皆さんや国民の皆さんに安心をしていただけるような、そういった議論を重ねて参ることを最後にお約束をさせていただきまして、私の質問を終わります。大変ありがとうございました。

衆議院インターネット中継より)

 

中川委員からの質疑により、重要5項目は守られたとする政府側の考えが明らかになった。関税等の輸入の枠組みが全く変わっていないものはなくとも、実際の影響が出ない範囲で関税の撤廃や削減を行った、というのが政府の主張のようだ。やはり、「国会決議は守られたか」という論点のみならず、こういった実際に想定される影響についても論じていくべきであろう。

また、農業政策についても、その具体的な内容についてさらなる議論が必要だと考える。今回の答弁にもあった政府と関係団体の意見交換の場など、形だけの農業政策になってしまう恐れもあり、そうなってしまっては、結果的に農業の没落を加速させてしまうことになる。その場しのぎではない取り組みがなされるよう、議論が深まることに期待したい。

 

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