日本 選挙

【4月22日の国会】一票の格差是正へ。割れる与野党。

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22日、国会では衆議院本会議が開かれ、自民・公明党と民進党のそれぞれが提出した「衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律案」が審議入りした。最高裁で違憲状態であるとの判決が出されるなど、かねてより問題視されていた一票の格差の問題解消に向けて、与党と民進党それぞれから法案が提出された。2つの案が並行審議される事態となっているが、それぞれの案は何が異なるのだろうか。本記事ではそれぞれの趣旨説明を中心に、両案の中身を見ていきたい。

 

アダムズ方式の導入時期が焦点

本会議では、自由民主党・細田博之議員と民進党・今井雅人議員がそれぞれ趣旨説明を行った。いずれの案においても、衆議院議員の定数10の削減が求められているが、アダムズ方式の導入時期については意見が割れており、与党案では2020年の国政調査後とされているのに対し、民進党案では2010年の国勢調査に基づいて直ちに導入するとされている。以下はそれぞれの議員による趣旨説明の全文である。

与党案:平成32年国勢調査から適用する

自由民主党・細田議員:

ただいま議題となりました、自由民主党及び公明党提出の、衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律案につきまして、提出者を代表いたしまして、その提案理由及び内容の概要をご説明申し上げます。

まず本法律案の提案理由についてご説明をいたします。衆議院小選挙区選出議員の選挙区間における人口格差については、近年、平成23年、25年、及び27年と、3度にわたり、違憲状態である旨の最高裁判所大法廷判決が出されており、違憲状態の解消に向けた格差是正措置を講ずることが、喫緊の課題となっております。また、平成26年6月19日の衆議院議員運営委員会の議決に基づき、議長の下に設置された諮問機関、衆議院選挙制度に関する調査会においては、佐々木毅座長の下、計17回にも及ぶ会議が開催され、衆議院小選挙区の一票の格差の問題や、各選挙制度の比較綱領、そして衆議院議員の定数削減等について、精力的かつ真摯に議論を行っていただきました。その議論の結果を踏まえ、本年1月14日に同調査会の答申が、議長に提出されました。自由民主党及び公明党は、この答申の内容を尊重する立場から、それぞれ検討を行い、議長のご指導の下、両党の間で協議を重ねました。このような経緯を経て、今般両党は、最高裁判決及び調査会答申に沿って、衆議院議員の定数を削減するとともに、違憲状態の解消に向けた衆議院小選挙区に係る人口格差の是正措置を講じることとした次第であります。以上がこの法律案を提出した理由であります。

次に、本法律案の内容の概要についてご説明申し上げます。第一に、衆議院議員選挙区画定審議会設置法の一部改正についてであります。衆議院小選挙区選出議員の選挙区間における人口格差を是正するため、都道府県別定数配分の方式として、いわゆるアダムズ方式を導入するとともに、同方式による都道府県別定数配分は、制度の安定性を勘案し、10年に1度の大規模国勢調査でのみ行うこととしております。なお、このアダムズ方式導入に係る体制については、本法律案施行後の直近の大規模国勢調査である、平成32年国勢調査から適用されることとしております。また、大規模国勢調査の中間年に実施される簡易国勢調査に基づく改定案の作成にあたっては、各都道府県の選挙区の数は変更せず、選挙区間の格差が2倍以上となった時に境界の変更で対応することとしております。

第二に、公職選挙法の一部改正についてであります。本法律案では衆議院議員の定数を465人とし、小選挙区選出議員を6人、比例代表選出議員を4人、合計して10人削減することとしており、削減後の小選挙区の区割りは、別に法律で定めることといたしております。また、比例ブロックの定数配分について、小選挙区と同様、アダムズ方式により行うことを明記いたしております。

第三に、平成32年の国勢調査までの、緊急是正措置として行う、平成27年の国勢調査の結果に基づく改定案の作成及び勧告についてであります。衆議院議員選挙区画定審議会は、平成27年の国勢調査の結果に基づき、小選挙区の区割り改定案の作成及び勧告を行うものとし、この改定案の作成にあたっては、定数6減の対象となる都道府県を、平成27年の国勢調査に基づきアダムズ方式により、都道府県別定数を計算した場合に減員対象となる都道府県の内、議員一人あたり人口の最も少ない都道府県から順に6都道府県とするとともに、各小選挙区の人口に関し、将来見込み人口を踏まえ、次回の見直しまでの5年間を通じて格差2倍未満となるように区割りを行うこととしております。また、比例ブロックの定数配分についても、平成27年の国勢調査に基づき、小選挙区と同様の基準により、議員一人あたり人口の最も少ないブロックから順に4ブロックを削減の対象とすることとしております。

この他、検討条項を設け、本法の施行後においても、全国民を代表する国会議員を選出するための、望ましい選挙制度のあり方については、不断の見直しが行われるものとしております。以上が、本法律案の提案理由及び内容の概要であります。

 

民進党案:平成22年の国勢調査の結果に基づく

民進党・今井議員:

ただいま議題となりました、民進党・無所属クラブ提出の、衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律案につきまして、提出者を代表いたしまして、その提案理由及び内容の概要をご説明申し上げます。

まず、本法律案の提案理由についてご説明いたします。一昨年、議長の下に設置された諮問機関である、衆議院選挙制度に関する調査会におかれては、佐々木毅座長をはじめ、委員の皆様に多大なご尽力をいただき、本年1月に、答申を大島議長に提出をしていただいたところでございます。答申においては、格差是正は喫緊の最重要課題である、とされております。これは、改めて申し上げるまでもなく、ここ5年余りの間に3度も出された最高裁判所の違憲状態判決を深刻に受け止め、先送りをすることなく、違憲状態の解消を早急に行わなければならないということを意味いたします。

また、衆院議員の定数削減に関しては、答申では、多くの政党の選挙公約であり、主権者たる国民との約束であるとされております。この定数削減の約束に関しては、私たちが決して忘れてはならない約束がございます。今をさかのぼること3年半近く前の、平成24年11月14日に行われた党首討論において、当時の民主党の野田佳彦総理と、自由民主党の安倍晋三総裁との間で、「遅くとも平成25年の通常国会で定数削減を行う」との約束が交わされました。テレビ中継がなされ、国民注視の下で交わされたこの約束の政治的な重さは、計り知れないものがあります。

この約束に照らせば、答申において示された定数の10人削減は、われわれ民進党としては満足のいくものではありませんが、調査会設置の際に「各会派は、調査会の答申を尊重するものとする」と議決したことを踏まえ、今後のさらなる定数削減を視野に入れた「一歩前進」と評価するとともに、喫緊の最重要課題である格差是正を行うため、この法律案を提出することといたしました。以上がこの法律案を提出した理由でございます。

次に、本法律案の内容の概要についてご説明をいたします。第一に、衆議院議員選挙区画定審議会設置法の一部改正についてでございます。衆議院小選挙区選出議員の選挙区間における人口格差を是正するため、都道府県別定数配分の方式として、いわゆるアダムズ方式を導入するとともに、同方式による都道府県別定数配分は、制度の安定性を勘案し、10年に1度の大規模国勢調査でのみ行うこととしております。また、大規模国勢調査の中間年に実施される簡易国勢調査に基づく改定案の作成にあたっては、各都道府県の選挙区の数は変更せず、選挙区間の格差が2倍以上となった時に境界の変更で対応することとしております。

なお、このアダムズ方式の導入の時期については、調査会答申をできる限り忠実に法案化するという観点から、平成22年の大規模国勢調査から実施することとしております。具体的には、平成22年の国勢調査の結果に基づいて、アダムズ方式により都道府県別定数の配分を行った上で、平成27年の国勢調査の結果に基づいて、都道府県内の小選挙区の改定案の作成及び勧告を行うものとしております。

第二に、公職選挙法の一部改正についてであります。本法律案では、衆議院議員の定数を465人とし、小選挙区選出議員を6人、比例代表選出議員を4人、合計して10人削減することとしており、削減後の小選挙区の区割りは、別に法律で定めることとしております。また、比例ブロックの定数配分について、アダムズ方式により行うことを明記しており、小選挙区と同様、平成22年の国勢調査の結果に基づいてアダムズ方式によりブロック別の定数を配分しております。

第三に、見直し条項を設け、本法の施行後においても、全国民を代表する国会議員を選出するための望ましい選挙制度の在り方については、不断の見直しが行われるものとし、この見直しにおいては、特に人口が急激に減少している地域の民意を適切に反映させることに留意をするとともに、さらなる国会議員の定数削減を図るよう努めるものとしております。以上が、本法律案の提案理由及び内容の概要でございます。

民進党案は制度改革の緊急性を考慮

それぞれの趣旨説明終了後、両案に対して質疑があった。最初の質疑に立った自由民主党・塩谷立議員は、アダムズ方式の導入時期について与党案の方が適切であるとの考えを述べた上で、民進党に対して「なぜ平成22年にさかのぼり、古いデータを使おうとしているのでしょうか」と質問。それに対し、民進党・今井議員は、「制度改革の重要性と緊急性に鑑みれば、既に確定している直近の大規模国勢調査であるところの平成22年の調査に基づいて、これを実現すべきとする本法律案は、調査会の答申を正面から受け止めた、ごく自然な内容のものであります。」答弁した。

続いて、民進党・笠浩史議員が質疑を行い、「6年前の調査では古すぎるので、2015年簡易国勢調査をもとにアダムズ方式を導入すべきではないか、との指摘もあります」と述べ、民進党提案者の説明を要求。これに対して、民進党・落合貴之議員は、「もし自民党・公明党案のように先送りをせずに、速やかにアダムズ方式導入することにご賛同いただけるのであれば、2015年簡易国政調査によるアダムズ方式導入への修正も検討したい」と答弁した。

 

平成22年と27年の国勢調査では、定数配分の結果が変わる

さらに笠議員は、「公明党は、山口代表をはじめとして、党幹部が、2015年簡易国勢調査を使用してアダムズ方式を導入すべきと、重ねて表明してきました。これは、もうこれ以上の先送りは許されないという民進党案と、基本的には同じ認識だったと思います。一体、いつの間に、何故に変説したのか」と問い、今度は公明党に答弁を要求。公明党からは北側一雄議員が答弁に立ち、「現在の人口分布に最も近い平成27年の簡易国勢調査の結果に基づき、アダムズ方式を導入すべきであると主張してきた立場からは、それよりも古い、平成22年の大規模国勢調査を起点にアダムズ方式を導入することへの合理性は乏しいと考えております。現に、平成22年と、平成27年の国勢調査をもとに、アダムズ方式によって都道府県への定数配分を行った場合、定数配分の結果には違いが生じて参ります。にもかかわらず、あえて古い数値を用いて、定数配分を行うことに合理性があるとは思えません。また、平成22年の大規模国勢調査にさかのぼってアダムズ方式を導入したとしても、4年後の平成32年には次の大規模国勢調査が控えており、結局、立て続けに定数配分への見直しを行うこととなり、選挙制度の安定性に欠けるのではないかと考えます」と反論した。

衆議院インターネット中継より)

 

 

両案の違いがはっきりと示され、建設的な質疑答弁が多く見られた。両案はこのあと、衆議院の倫理選挙特別委員会での審議を経たうえで、4月中に衆議院で採決される。その後、参議院に送付され、5月中に与党案が成立する見通しとなっているが、民主主義の根幹に関わる議論故に、慎重な合意形成を図っていただきたい。

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