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過激な発言が目立つトランプ、実際は何をしようとしているのか?

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2016年米大統領選挙で共和党の指名獲得争いでトップを走るドナルド・トランプ氏が毎日メディアを騒がしている。

先日は、「イスラム教徒の入国を禁止すべき」だと提案し、世界中で”炎上”している。

ハリーポッターの原作者J・K・ローリングは「トランプ氏はヴォルデモート以下」だと批判し、BuzzFeedの編集長は「偽りの人種差別主義者」と強く非難した。英国では英議会に対してトランプ氏の英国入国を禁止するよう求めた署名が30万人を超え審議が検討されることになった。米国防総省はトランプ氏の発言はISを勢いづけ、米安全保障を脅かすものだと警告し、ついにはホワイトハウスまでもが「国にとって有害」、「トランプ氏は大統領になる資格がなくなった」と、宗教を理由にした差別が憲法に反すると示唆した。

こうした非難に対し、トランプ氏は「私がやっていることはルーズベルト元大統領と変わらない」と日米開戦直後の日系人・ドイツ系住民らの権利制限を引き合いに出し反論している。

 

このように、毎日トランプ氏の発言が注目を集めているが、4日に発表されたCNNテレビの世論調査ではトランプ氏の支持率は過去最高の36%と、順調に伸ばしている。

http://www.cnn.co.jp/photo/l/671936.html
http://www.cnn.co.jp/photo/l/671936.html

 

しかし、過激な発言ばかりが注目を集めているが、トランプ氏はどういった政策を実現しようとしているのか。
トランプ氏が共和党指名候補に選ばれる可能性が現実的になってきた今改めて見てみたい。

 

選挙スローガンは「アメリカを再び偉大に」

公約としては大きく5つ挙げている

米中貿易の改革

中国の人民元切り下げを止めさせ、環境基準や労働基準を改善させる。また知的財産保護やハッキングに対して厳しく対処する。「中国はアメリカの雇用とカネをかすめ取っている」と言い放っている。

 

退役軍人省の改革

退役軍人省の首脳部を総入れ替えし、退役軍人の医療制度を変革する。具体的には、退役軍人の病院での待ち時間を減らせるように仕組みを変え、増加する女性退役軍人の医療充実のため、女性医療を専門とする医師の数も増やすつもりだ。またオバマケアは大失敗だとし、自由市場原理で動く医療保険計画を提案している。

 

税制の改革

年収2万5000ドル(約300万円)未満の人の所得税を免除する。法人税率を15%引き下げ、多国籍企業が海外に滞留した所得は税率10%で国内に還流させることができるようにする。最低賃金の引き上げには反対し、労働コストの低い海外に移転した製造業の雇用を米国に戻すべきだとしている。

 

武器の所有権利

銃規制強化に反対し、銃購入時の身元調査の範囲拡大にも反対している。また銃乱射事件を減らすために精神医療に投資すべきだとしている。

 

移民の改革

オバマ政権が大統領令で導入した移民制度改革を撤廃し、数百万人に上る不法移民を強制送還する。ムスリム系米国人のデータベースを強化し、モスクを監視すべき。米国とメキシコの間に「大きな壁」を建てる(トランプ氏は以前からメキシコ人を強姦犯などと罵倒している)。

 

また、女性や弱者への蔑視発言も多く(先日は身体に障害を持つニューヨーク・タイムズ紙の記者を馬鹿にし騒ぎとなった)、ISに対しては水責めなどもっと厳しく尋問し、空爆ももっと徹底的に爆撃すべきなどと発言している。

一方、米国は国際紛争への介入を大幅に削減すべきだと主張し、サダム・フセインやムアンマル・カダフィが権力者でいた方が良かったと発言している。

 

トランプはなぜ人気を集めているのか?

排外主義的な思想が強く、仮にトランプ氏が大統領になった場合、他国との関係は大きく変わるであろう。グローバル化によって国境がなくなりつつある今、テロや移民に仕事を奪われる恐れなど世界中で不安が高まっているように思える。実際、シェンゲン協定を廃止すべきか議論され、先日のフランス地方選では極右政党が躍進している。

また、米国ではポリティカル・コレクトレス(政治的公正)という言葉を最近よく見かけるが、多様性の名の下に同調を要求する空気が生まれている。LGBTをはじめとする人権意識の高まりから、これに反している人を排除するという、排外主義的な思想に嫌悪感が生まれつつある。これは日本でも思い当たるであろう。

トランプ氏の発言を反射的に「差別主義者」などと強く非難している人も自問する必要はないだろうか(もちろん筆者がトランプ氏を支持していることは意味していない)。

自分の価値観を絶対視する行為は正義の押し付けであり、自らの正義を絶対視するISの行動と近いものがある。インターネット上では自分の見たい情報しか見ない状況になりやすく、今後もこうした空気は増すであろう。
トランプ氏はこうした国民の不満を率直に代弁している存在となっている。実際、白人中間層を中心にオバマ政権の難民・移民受入政策や対ISへの対応に不満が高まっている。これが人気を集めている大きな理由の一つだ。また、経済界や退役軍人など利する人々が多いのも事実である。

過激な発言ばかりに注目が集まっているが、トランプ氏が人気を集めている背景を見ていくと、米国、また世界が抱えている諸問題が明らかになってくるだろう。

(photo: wikipedia)

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