アジア 安全保障

アフガニスタン、民間人死傷者数が過去最悪に--国連報告書、「異常で恥ずべき数値」

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先月25日、国連アフガニスタン支援団(United Nations Assistance Mission in Afghanistan/以下UNAMA)は2016年前半の1月~6月にアフガニスタンで戦闘やテロにより死傷した民間人の数が、2009年の調査開始以降では最悪となる5,166人になったと発表した。

不安定な情勢が続くアフガニスタン。同国の情勢を概観する。

 

”異常で恥ずべき”数値

UNAMAによる発表では、2009年1月1日から2016年6月30日の間に計測された民間人の死傷者数は63,934人(死亡22,941名、負傷40,993名)とされている。

今年1月から6月の民間人の死者は1,601人、その内の388人を子供が、また130人を女性が占めている。また同期間における民間人の負傷者数は3,565人、その内の1,121人を子供が、また377人を女性が占めており、報告書ではこの数値は”異常で恥ずべき”ものとされている。

 

誰が/何が民間人を殺しているのか?

報告書では、民間人の犠牲のうちその大半である60%は、タリバンやISといった反政府組織によるものとされている一方で、新政府側勢力によって死傷する民間人の数が増加傾向にあることも懸念されている。今年1月~6月の半年間で1,180人の民間人が新政府側勢力の手によって死傷しており、この数は総計の23%にあたり、昨年の同時期に比べて47%も増加している。

犠牲者の多くは、自爆テロや即席爆破装置(Improvised Explosive Device, IED)によって犠牲になっている。また、爆発物の残骸で遊んでいた子供たちが死亡、または重傷を負うというケースも報告されており、同様のケースによる犠牲者の約85%が子供によって占められている。報告書では、”アイスクリームと交換できなかった迫撃砲の残骸を子ども達が投げて遊んでいる”というケースも含まれている。

アフガニスタン担当国連事務総長特別代表である山本忠通氏は、報告書に記載された犠牲者は同国が抱える苦しみの一部分を表したものであり、武力紛争によってアフガニスタンの人々にもたらされている損害や制限の全容は捉えていないという旨を強調している。また山本氏は、報告書は紛争の担い手たちに対して、民間人を戦争の恐怖に巻き込まないようアクションを呼び掛けるものとして機能しなければならないと強調した上で、「紛争の長期化は、教育や医療、暮らしや保護、移動の自由、多くの市民的・政治的・経済的・社会的・文化的権利へのアクセスが、数百万人のアフガニスタンの人々にとって、あまりにも長い間著しく損なわれている事を意味する」と述べている。

 

タリバン新指導者誕生とISの脅威

今月1日には首都カブールで、アメリカの企業やNGO関係者など外国人も多く利用するゲストハウスを武装集団が襲撃。治安部隊と長時間の銃撃戦となり、警察官1人が死亡し、反政府武装勢力のタリバンが犯行を認める声明を出している。

今年5月にはタリバンが、最高指導者マンスール師がアメリカ軍の空爆によって死亡したことを公式に認めており、後継者として側近のハイバトゥラ・アクンザダ師が新しい指導者になると発表していた。

アルジャジーラ記者のカイス・アジミ―氏はカブールからのレポートで、アクンザダ師はタリバン組織内ではよく知られた人物であるとして、「アクンザダ師はタリバン内ではとても尊敬されており、(中略)”先生”と呼ばれていた。」「(アクンザダ師は)組織の結託を強める存在になりうる。」と述べている。

また先月23日には、首都カブールで少数民族のハザラ人らによる抗議デモの最中、爆発が発生。同国保健省の発表によれば80人が死亡、230人以上が負傷した。同テロに対してはイスラム系過激派組織ISが犯行声明を出しており、同国でISによる大規模なテロが行われるのは初めてだと言われている。ISの脅威も広がりつつあるアフガニスタン。先行きは不透明だ。

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