アメリカ 社会

「私はフェミニスト」ーオバマ米大統領が寄稿<全文翻訳>

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オバマ米大統領は4日、女性誌「GLAMOUR」に「これがフェミニストの顔」と題したエッセーを寄稿し、性差別主義や固定観念をなくす必要性を訴えた。

日本でも安倍政権によって「女性の活躍」が叫ばれ、東京都知事選では、竹信三恵子・和光大学教授や浅倉むつ子・早稲田大学教授らによって急遽結成された「東京から男女平等を実現する女性勝手連」が、鳥越俊太郎氏を支持し、要望書を手渡している。

だが、現状は、安倍政権が推進している女性活躍も経済的な理由にとどまっており、オバマ大統領が主張する「フェミニスト」とは大きく異なる。

 

実際、現状の日本を象徴するかのように、先月末に共感を呼んだPOLAのCMではナレーションでこう語られている。

「この国は、女性にとって発展途上国だ。限られたチャンス、立ちはだかるアンフェア。かつての常識はただのしがらみになっている。それが私には不自由だ。迷うな、惑わされるな。大切なことは私自身が知っている」

リクルート POLA(60秒) /株式会社ポーラ

 

日本、そして世界で男女平等を実現するために何が必要なのか。

大統領交代が迫る中、自身の信念を改めてアメリカ、世界に訴えかけているオバマ大統領が寄稿したエッセーを翻訳して紹介したい。

 

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President Obama (here in 1980)

祖母の時代と比べて私の娘たちにとっての人生は大きく変わった

大統領であるというのはきつい側面がたくさんあるが、少しばかりいいこともある。世界中でとてつもなく優れた人たちと出会える。この国の人生で違いを出せる場所にオフィスを構えられる。大統領専用機に乗れる。

しかしこの仕事での意外なメリットで最高のものはおそらく、職場の真上で生活できることだ。これまでの長い人生、私は多くの時間を通勤に費やしてきた。州の上院議員時代にはシカゴの自宅からイリノイ州スプリングフィールドまで、連邦上院議員時代にはワシントンD.C.まで。つまり、私がなりたいと思っていた夫や父親になるためにはとても一所懸命に仕事をしなくてはいけなかった。

しかしこの7年半、私の通勤時間は居間から執務室へ移動する45秒に短縮された。その結果、私は自分の娘が聡明で明るく、優しい素晴らしい女性に成長していくさまを見られる時間を多く持てることができた。

子どもたちが巣立っていくのを目にするのはいつも簡単にできるとは限らない。しかし私が楽観的になれることが1つあるとすれば、今は女性にとっての時代としてはこれまでとは全く違うことだ。過去100年、50年、さらにはこの8年で実現した進歩のおかげで、祖母の時代と比べて私の娘たちにとっての人生は大きく変わった。私はこれを大統領としてだけでなく、一人のフェミニストとして発言している。

 

私の人生を通して、労働市場の中で基本的に低賃金で一握りの仕事に女性が閉じ込められていた時代から、女性が労働力の半分を占めるようになっただけではなく、スポーツから宇宙、ハリウッドから最高裁まで、あらゆる部門で女性がリードする時代に変化した。身体、教育、キャリア、金銭的な面で女性がどのような人生を送るかについて自ら選択する自由を獲得していくのを目にしてきた。女性がクレジットカードを取得するには結婚が条件というのは遠い昔の話だ。実際、結婚しているか否かに関わらず、女性は金銭面で男性に頼らなくなっている。

 

最も重要な変化は、私たち自身が変わること

だからこそ、これまでの進歩は軽視すべきではない。そのような行為は、これまで公正さを求めて闘ってきた人たちに対するひどい仕打ちとなるだろう。同じく、わが国そして世界で、女性や少女たちの将来の見通しを改善させるためにすべきことはまだたくさんある。同一賃金・同一労働から産む権利の保護まで、私は 良い政策を継続していくものの、新法を成立させるのとはまったく関係のない変化もある。

実際、最も重要な変化は一番大変なものである。それは、私たち自身が変わることだ。

 

女性に対する固定観念に囚われている

それについては、6月にホワイトハウスで開かれた初の米国女性サミットの場で長々と話をした。今の時点で私たちはまだ、男性そして女性はいかに振る舞うべきかについての固定観念に囚われている。私にとってのヒロインの1人は下院議員のシャーリー・チザム氏だ。彼女は主要政党で大統領候補となった初めてのアフリカ系アメリカ人だった。彼女はかつて「女性の感情的、性的、心理学的な固定観念は、産婦人科の医師が『女の子ですね』と言ったときに始まる」と言った。女の子たちは若い頃から、こうした固定観念が自分たちの見方に影響を与えるのを知っており、ある種の外見ができなかったり行動ができなかったりすると自分がどこか無価値であると感じてしまう。実際、性に関する固定観念は、性や性に対する認知、性的志向に関わらず私たち全員に影響を及ぼしている。

 

私自身になろうとしたとき、人生はとても楽になった

さて、私の人生で最も重要だった人はすべて女性だった。私を育ててくれたのは、発展途上国で女性に権利を与えるための運動にキャリアのほとんどを捧げたシングルマザー。祖母は、母の子育てを手伝ってくれたほか、銀行勤務でガラスの天井にぶつかった人だ。忙しいキャリアと子育ての両立を図るミシェルを見てきた。多くの働く女性と同じように、夫の選択には疑問を投げかける人がほとんどいないことを知りつつ、彼女は(仕事と子育ての)トレードオフにどのように対処すべきかという期待と判断に悩んでいた。現実には、娘たちがまだ小さかった頃、私は法律の教授としての仕事を掛け持ちしつつ立法関連作業で家を空けることがよくあった。今、当時を振り返って分かるのは、私も手伝いはしたが、基本的には私のスケジュール、私の任期がすべてだった。子育ての負担は均衡の取れない不公平な形でミシェルにのしかかっていた。

そして私は今、女性が直面している特有の課題についてよく知っておきたいと思う。それは私のフェミニズム観を形成したものでもある。ただ正直に言うと、2人の娘を持つ父親となったことで性の固定観念がいかに私たちの社会を支配しているかを知るようになったのも事実だ。些細な、そして深刻な社会的な合図が文化として伝播されていった。女性がある種の見た目、行動、さらには思考をしなくてはならないという猛烈なプレッシャーを受けているのを感じている。

私がまだ若かった頃、これと同じ固定観念は自意識にも影響を与えた。父親に育てられることなく大きくなったこともあり、私は自分が誰なのか、世界は自分をどのように見ているのか、自分はどのような人物になりたいのかについて多くの時間を費やして答えを見つけようとした。男らしさについての社会のあらゆるメッセージを吸収して、男性であるためにはこれが正しい、あれは正しくないと信じるのはたやすいことだ。しかし私は年齢を重ねるにつれ、タフガイ、クールガイになるのは自分が取るべき道ではないと悟った。それは若さ、そして不安定さの表れだ。単純に私自身になろうとしたとき、人生はとても楽になった。

 

子どものおむつを替える男性を誉めたり、専業主夫に汚名を着せたり、働く女性に罰を与えたりする態度を変えていかなくてはならない

だから私たちはこうした限界を打ち破らなくてはならない。女の子は控えめに、男の子は自己主張をといった育て方や、娘が大声をあげたり、息子が涙を流したりしたときに叱るという態度を変えていかなくてはならない。女性の不貞には罰を与え、男性のそれを誉めるという態度を変えていかなくてはならない。

通りを歩いている女性、ネットを見ている女性に対する日常的な嫌がらせを許容する態度を変えていかなくてはならない。男性にとって女性の存在と成功は脅威だと教える態度を変えていかなくてはならない。

子どものおむつを替える男性を誉めたり、専業主夫に汚名を着せたり、働く女性に罰を与えたりする態度を変えていかなくてはならない。男性であるなら自信や競争する力を持ち野心的であることを重視する態度を変えていかなくてはならない。そして偉そうにしていた男性は、成功に必要だと思っていたその資質が突然、自分の首を絞めることになってしまう。

とりわけ、肌の色が白くない女性や少女に容赦ない光を浴びせる文化を変えていかなくてはならない。ミシェルはよくこの話をしてくれた。自力であれほどの成功を収めたにも関わらず、彼女は今でも疑問が消えないという。自分は正しい方向を向いているか、正しい振る舞いをしているか。あまりにも攻撃的、さらには「怒っているように」見えないかを気にしなくてはいけなかったという。

1人の親として、子どもがこうした制約を超えていけるよう手助けするのは継続的な学習プロセスだ。ミシェルと私は娘たちに、ダブルスタンダードを目にしたとき、性や人種で不当に判断されていると感じたとき、そして同じことが他人になされているのを見かけたときには声をあげるようにと育ててきた。選択する分野が何であれ、子どもたちにとってある世界で最高峰まで上り詰めた人がお手本にいるのは重要なことだ。それから、彼女たちの父親がフェミニストであるのも大事だ。すべての男性にそれを求めるからだ。

 

性差別主義に立ち向かうのも男性の役割だ。配偶者、パートナー、ボーイフレンドとして、本当の意味で平等な関係を築くために懸命になって考えなくてはならない。

明るい話題としては、国中そして世界中どこへ行っても、性別の役割に関する古めかしい考え方に対抗している人を見かけることだ。性暴行を撲滅させるためのキャンペーン「It’s On Us」に参加してくれた若い男性から、わが国で史上初の特殊部隊アーミーレンジャーになった若い女性まで、あなた方の世代は古めかしい思考に縛られるのを拒絶している。また、あなた方は私たちに、アイデンティティーに関する昔ながらの堅苦しい考え方に固執するよう強制するのは誰にとっても好ましくないということを教えてくれている。男性、女性、ゲイ、非同性愛者、性転換者、それ以外の全ての人に対して。こうした固定観念は、私たち自身であろうとする力を制限してしまう。

 

建国後初めて大統領候補に女性が選ばれた歴史的な選挙

今秋、私たちは歴史的な選挙に巡り合う。建国後240年、女性の参政権獲得から約100年経って、主要政党の大統領候補者に1人の女性が選ばれた。あなたが政治に対してどのような考え方を持っていようとも、アメリカにとって歴史的な瞬間であることは間違いない。また、男女平等の実現に向けて女性が長い旅をしてきたことを示す証左でもある。

 

誰もが平等であれば私たちはもっと自由になれる

私は子どもたちに、今回の出来事も次の世代に受け継がれているものとして見てほしい。これはただベンジャミン(に代表される男性)だけの問題ではなく、タブマン(に代表される女性)の問題であることを知ってほしい。そして、子ども1人1人が自らの意思で人生を送れるような国にアメリカがなるよう各自の役割を果たしてほしいと願っている。

21世紀のフェミニズムとは、次のように言えるのではないか。誰もが平等であれば私たちはもっと自由になれるという考え方だと。

President Barack Obama Says, “This Is What a Feminist Looks Like”

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