アメリカ 社会 経済

トランプ現象の背景ー米国 中産階級の没落

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トランプ氏のイスラム教徒入国禁止発言に対する批判はさらに加熱している。英への入国禁止請願を求める署名は45万人に達し、イスラエルのネタニヤフ首相までもが批判した。それを受けてトランプ氏はイスラエル訪問を延期するとしている。

合衆国大統領になってからあらためて訪問すると発言。

一方、ニューヨーク・タイムズ紙とCBSテレビが10日発表した世論調査では35%で首位と、10月の前回調査から13%上昇している。

 

ではどうしてトランプ氏が人気を集めているのか。昨日の記事では、ポリティカル・コレクトレス(政治的公正)による抑圧、オバマ政権の難民・移民受入政策や対ISへの対応に対する不満をトランプ氏が解決してくれるのではないか、という期待から来ていると分析した。

本稿では、米国の内情を掘り下げ、より深く分析していきたい。

 

没落する中産階級

まずはこの図を見ていただきたい。

http://www.ft.com/intl/cms/s/0/98ce14ee-99a6-11e5-95c7-d47aa298f769.html#axzz3tw388SW7

この図を見ると、中産階級の数が減る一方で、上層に属する人々の数は増え、最下層に属する人々の数も増えていることがわかる。つまり、所得の格差が大きくなっていることを意味する。

 

縮小する白人層

また、移民の増加に伴い、白人層の割合も減る一方だ。

http://www.economist.com/blogs/graphicdetail/2015/03/daily-chart-5?fsrc=scn%2Ffb%2Fte%2Fdc%2Fed%2Ftucasaesmicasa

 

こうした状況下で、中間層、特に白人中間層は大きな不安を抱えている。それはオバマ大統領が貧困層やマイノリティを重視したためでもある。トランプ氏は急増するヒスパニック系も批判しており、白人中間層〜下層から共感を集めている。

移民に対する不満は白人に限定されず、米国民は移民について2012年の調査時点で、約半数の43%が現状維持、大きく増やすべき&少し増やすべきが計14%なのに対し、大きく減らすべき&少し減らすべきが計43%と不満を抱えている。

グローバル化によって、国内の人口構造まで変わりつつあるのが今の米国の現状だ。昨年以来、白人警官が黒人男性を射殺する事件が相次いでいるのも無関係ではないだろう。

 

重要性を増す中間層

縮小傾向にあるとはいえ、中間層がマジョリティであることに変わりはない。当然、次期大統領候補も、不安が高まる中間層への配慮を求められている。

トランプ氏は、富裕層を重視する共和党でありながら、富裕層に増税し、中間層については減税を行いたいと述べている。

TPPに賛成していたクリントン氏が、合意後TPP反対に方針転換したのも中間層を重視しているからだ。クリントン氏は「かつて賛成していた頃のTPPとは異なり、米国の中間層にとって良くない合意だった」と主張。TPP条文でも、中間層の労働に対する影響に多くのページが割かれている。

 

現実を見据えた議論を

今回のトランプ現象に対して、「人種差別は許せない」などと批判しても意味はない。テロや急激なグローバル化に対する恐怖を多くの人々が抱えていることは事実だからだ。理念の観点からのみ批判していても解決はしない。実際、この恐怖に打ち克つ術を現代の政治家は持っていない。

どうすればこの恐怖に打ち克つことができるのか。現実を見据えた議論が求められている。

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