中国 経済

多くの農民工が劣悪な環境で生活する中国ー7億人以上が都市に集中(岡本信広)

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中国では昨年(2015年)8月に天津での爆発事故、12月には深圳の工業団地で土砂崩れが起こった。北京では12月にPM2.5の赤色警報が2度出るなど、大気汚染のひどさが話題になった。

これらの問題の共通点は都市で発生しているということだ。1978年に都市化率(都市に住む人口比率)は18%であったにも関わらず、2015年には55%へと急速に増加した。すなわち13億の人口のうちすでに7億人以上が都市に住んでいることになる。このような大量の人口の都市集中は都市を危険なものにしている。

中国共産党と政府が年に一度翌年の経済政策を協議する中央経済工作会議が12月18日から21日まで北京で開催された。例年2日間の開催が4日間になったことから、日本のマスメディアは中国経済の課題が多いからだ、などいろいろな憶測を流した。

これは間違いである。会議が4日間になった理由はただ一つ。2013年と同じように、20日、21日に都市化に関する会議が開かれたからである。

日本のメディアは毎年中央経済工作会議ばかりを注目し、GDP成長率目標の引き下げや中国経済の課題を「楽しみ」にしているかのようだ。だから、4日間の会議の意味を見誤るし、2日間の「中央都市工作会議」の重要性を理解していない。そのため、都市工作会議についての報道はほとんどなかった。

なぜこの時期に中央都市工作会議が開催されたのか、その背景を考えてみよう。

 

1.「中央都市工作会議」が注目されうる理由

この会議は2点の意味で注目しうる。1点目は、37年ぶりの開催である点だ。第一次五カ年計画期(1952年‐1957年)や大躍進期(1958-1961)の急速な工業化とそれに伴う都市化は中国の都市部を大混乱に陥れた。農地は捨てられ、都市の住宅は足らず、その結果都市住民への食糧配給が滞った。中国共産党は都市問題を重視し、1962年9月、1963年10月に「中央(全国)都市工作会議」を開催したのである。

その後、文化大革命を経て改革開放が始まる直前の1978年5月に3回目の中央(全国)都市工作会議が開かれている。文化大革命で混乱した都市の立て直しのために、都市建設が主要な議題となった。

今回の中央都市工作会議はつまり37年ぶり第4回目の開催となる。

2点目は、都市の管理は現政権の重要課題であることを改めて示している。2012年の党大会で習近平、李克強体制が固まり、2013年3月の全国人民代表大会において習近平国家主席、李克強国務院総理の政権が発足した。総理としての最初の記者会見で、李克強は「新型都市化」を掲げた。多くの農民が都市労働者、すなわち農民工として経済発展に貢献しているにもかかわらず、戸籍上農民という扱いで、都市内部で就業、教育、社会保障の面及び生活面において劣悪に扱われていたのである。この農民工の「都市住民化」が現政権の重要課題なのである。

 

2.都市化の課題

中国の都市化は恐ろしく速い。北京の事例をみても、1978年に850万人だった人口は2015年には2100万人になり、都市人口が37年で2倍半になった(それよりも多いという意見もある)。その結果、北京は「都市病」、いわゆる急速な都市化によるさまざまな都市の問題を抱えることとなった。

北京の渋滞はひどいものとなり、渋滞を防ぐ施策としてナンバープレートの奇数、偶数によって自家用車の運転可能日を指定し、交通規制を行っている。

それに加え、日本でも有名になっているように、北京の大気汚染はひどい。昨年12月には高濃度スモッグが発生、最高警戒レベルである赤色警報が2度出されるなど、市民の生活に大きな影響を与えた。

また日本では注目されていないが、急速な都市化で周辺農村が開発されたために、都市の中に一部農村の古い危険な建物が残り(都市の中の農村、「城中村」と呼ばれる)、多くの農民工が劣悪な環境で生活している。

このような各種都市問題にどう対応するのか、つまり都市をどのように管理するかが喫緊の課題になっている。

 

3.何が話し合われたのか

会議では一体何が確認されたのか、簡単に紹介しておこう。

1点目は、経済発展にともなう都市化の自然法則を尊重しつつ、人口と都市用地のバランスをとるということ。

2点目は、北京・天津・河北(京津冀)、長江経済ベルト、中西部地域における都市群の発展など全体観にたった都市化の進展を図るということ。

3点目は、都市の特色に合わせた都市計画の立案、実行、管理、都市サービスをよりよいものとし、都市づくりを系統立てて行うこと。

4点目は、農民の都市住民化に合わせた戸籍、土地、社会保障の改革を進め、科学技術と文化を発展させ、都市発展の持続性を図ること。

5点目は、生産部門を集積させ、スラム地域を改造して住民が住みやすい街づくりを行い、自然環境を保存した住みやすい都市づくりを行うこと。

6点目は、政府、社会、市民という主体がともに都市づくりを行うという意識作りをもつとともに、住民の知る権利、参与する権利、監督する権利を大事にして、各主体が都市発展に積極的になるようすること。

以上のように、今回の中央都市工作会議は、各地域の共産党員が都市づくりの大きな方針を確認しあったものといえるであろう。

 

4.評価

この会議の中国国内の見方を整理すると以下のようになる。

1点目は「住みやすい都市づくり」が中心議題であること。具体的にはこれまで中央が公式には認めていなかった「都市病」を正式に取り上げたという点が指摘される。中国共産党が本格的に都市問題を解決する姿勢を示した。

石楠(中国都市規劃学会秘書長)の見方では、これまでの過去の中央都市工作会議では、「都市は消費型、農村は生産型であり、都市は農村の生産を支持する」という都市の位置づけがなされ(1960年代)、改革開放とともに都市建設の資金調達方針が確認された(1978年)という(新華網2016/12/22)。そして、今回は「住みやすい都市づくり」こそが重要であることが認識されたとしている。

2点目は、2年前(2013年12月13-14日)に開催された中央都市化工作会議(注)と多くは似ているものの違いがあることである。具体的には都市化資金の問題が触れられていないこと、都市インフラ建設がさらに強調されていること、である(財新網2015/12/23)。都市化にまつわる資金について政府が積極的に投資することが暗に示されているとともに(つまり資金調達は障害ではない)、下水処理、廃棄物処理、都市交通インフラ(道路や公共交通機関)の充実に力を入れる方針だ。また単なるインフラ建設に陥って同じ規格の都市コピーが中国全土に広がらないように釘をさしている。

中国の都市は、世界の都市、ニューヨーク、パリ、ロンドンなどに比べてまだまだ住みにくいのが現状だ。日本の駐在員は住みにくさを感じ、日系企業も中国赴任者を手当するのが大変だという。北京をはじめ中国の都市は住みやすいものになるのか、今後の都市運営、都市経営が注目される。

 

(注)中央都市工作会議の都市は中国語の「城市」であり、中央都市化工作会議の都市化では「城鎮化」という言葉当てられている。城市は日本の都市と同じ概念だが、城鎮とは昔から存在する大中小都市だけではなく、農村(県レベル)の中心地域も都市にしていく意味合いが含まれており、都市の概念が広い。

 

<参考>

「时隔37年中央缘何重启城市工作会议?」新华网2015年12月22日

http://news.xinhuanet.com/politics/2015-12/22/c_128557061.htm

「同为“套开”,中央城市工作会议与中央城镇化工作会议有何异同」财新网2015年12月23日

http://opinion.caixin.com/2015-12-23/100891681.html

(photo: wikipedia)

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