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北朝鮮、ロケット発射ーその目的と影響は?

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北朝鮮は7日9時31分ごろ、北西部東倉里から地球観測衛星「光明星4号」をのせたロケットを南方に発射した。これに対し、政府は国家安全保障会議(NSC)を開き、首相は声明を発表。

「北朝鮮に対しては、繰り返し自制を求めてきたにも関わらず、今回、ミサイル発射を強行したことは、断じて容認できません。核実験に引き続き、今回のミサイル発射は、明白な安保理決議違反であり、我が国の安全保障上の重大な挑発行為です。ただちに国家安全保障会議を開催しました。北朝鮮に対して、国際社会と連携して、毅然と対応していく考えです。引き続き、政府の総力を挙げて、国民の安全の確保に万全を期してまいります」(首相官邸/LINE)

 

NSCで首相は「米国や韓国など関係国と連携し、必要な対応を適時適切に行う」よう求めた。

政府は北朝鮮の発射予告を受けて3日には、弾道ミサイル迎撃のための破壊措置命令を発令。航空自衛隊の地上配備型迎撃ミサイル、パトリオット(PAC3)を沖縄本島と宮古島、石垣島、東京・市ケ谷など計7カ所に配置し、発射に備えていた。だが、今回の緊急配備したPAC3は、発射地点、高度、方向から未来位置を予測し、大気圏内に再突入する段階で迎撃するシステムであり、予測ができなければ対処できないとされている。

 

目的はアメリカに向けたロケット発射能力確認

一方、北朝鮮国営の朝鮮中央テレビは同日正午「地球観測衛星・光明星(クァンミョンソン)4号を打ち上げ、軌道に進入させることに完全に成功した」と発表。

今回の衛星打ち上げは、2012年に行われた前回の銀河3号とほぼ同じであるが、衛星の重さが前回の100キログラムから200キログラムに、射点整備棟が大型化、離昇から第1段、第2段の落下までの時間が短くなった点が大きな違いで、ロケットエンジンが改良され、重いものをより遠くに飛ばすことが可能になったことを意味する。また、先月の「水爆実験」と合わせて考えると、水爆は(原爆に比べ)核兵器を小型化することになり、ミサイルの弾頭に使えるように着々と技術力を上げているようだ。

さらに、韓国の韓民求国防相は今回の射程について、前回の推定約1万キロより長い推定1万2000〜1万3000キロとの見方を示している。つまり北朝鮮から米本土に届く距離である。これらを考慮すると、今回の目的は米国に向けたロケット発射能力の確認にあるように思える。

 

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出典:http://www.straitstimes.com/asia/east-asia/chronology-of-north-korean-missile-development

 

だが、今回も「再突入」は行わず(ミサイルとして使うには一度大気圏の外に出た後再び大気圏に再突入し、目標に到達する必要がある)、ミサイルとして使えるレベルにあるかは疑問である。

*「ミサイル」と「ロケット」の違いは、ロケットエンジンを使って飛ばす技術や構造は基本的に同じだが、先端の搭載物が弾頭か衛星かにある。事実を確認するまで「ロケット」と表現するべきという意見もあるが、北朝鮮によるロケット・ミサイル発射はどちらも国連安保理決議への違反となり、重要な意味はないように思える(ただ過剰な反応をしないようにメディアはむやみに煽るべきではないが)。

 

各国の動き

・アメリカ

今回のロケット発射に対して、米国務省は「ミサイル」だと表現し、スーザン・ライス米大統領補佐官(安全保障担当)は、北朝鮮の弾道ミサイル技術使用は「またしても、不安定化をもたらす挑発的な行為」だと批判。「北朝鮮のミサイル・核兵器開発は、我が国の利益および最も親しい同盟諸国の安全保障に対する、深刻な脅威である」と声明を発表した。

 

・韓国

韓国政府も日本と同様にNSCを開き、朴槿恵大統領は「国連安保理で一日でも早く北朝鮮への厳しい制裁をまとめなければならない」と述べた。また韓国の独自制裁もすぐに発表し、南北軍事境界線で行われている金正恩体制を批判する宣伝放送の時間を拡大するという。また、年間100億円余りという北朝鮮にとって貴重な外貨収入源である南北共同事業の開城工業団地の閉鎖についても検討を始めるとしている。

韓国国防省は来月7日から行われる米韓合同軍事演習についても、去年よりも6000人近く多く参加させて、過去最大規模で行うと発表した。さらに、韓国と米国は、米国の最新鋭ミサイル迎撃システム「THAAD」を韓国に配備する可能性について協議を始めることで一致。同協議はスカパロッティ韓米連合司令官(在韓米軍司令官兼務)が提案した。THAADは砲台1基の設置費用が約1兆ウォン(約968億円)で、予備弾を含めると1兆5000億ウォンに上る。配備が決まった場合、韓国側は敷地と基盤施設を提供する。米国側はTHAADを展開し運営維持費を負担することになる。しかし、THAADの韓国配備には中国が難色を示しており、今回の決定に強く反発する可能性もある。

一方、韓国では保守派を中心に再び核武装論が盛り上がるとみられている。先月の水爆実験を受けて「核武装すべき」という声が強まっていたが、今後さらに強まりそうだ。だが、国内では反対する声が強い上、米国や中国を刺激することにもなり、実現性は低いであろう。もし本当に核武装すれば日本も「核武装すべき」だという声が強まるのは必至である。

 

・中国

今まで北朝鮮への制裁に反対してきた中国であるが、中国外務省は「弾道ミサイル」と表現。中国外務省は「北朝鮮が国際社会の反対を顧みず、弾道ミサイルを発射したことは遺憾だ」との声明を発表し、発射直前に、高官を北朝鮮に派遣し、発射を思いとどまるよう説得したが、北朝鮮が発射したことに対して失望したようだ。

 

・ロシア

ロシア外務省は、北朝鮮のロケット発射を強く批判し、「北朝鮮は国際社会の呼びかけに耳を傾けず、国際法の規範を挑戦的に無視していることを見せつけたと言わざるをえない」、「このような行動が朝鮮半島と北東アジア全体の状況に深刻な緊張をもたらし、ブロック政策をとって軍事的な対立を深めようとしている者を利し、地域の国々、なによりも北朝鮮自身の安全に深刻な損失をもたらすことは明らかだ」と、声明を発表した。「ブロック政策をとって軍事的な対立を深めようとしている者」というのは米国、つまり米国を利することになるという意味だ。

 

日本と韓国に関していえば、以前から射程圏内に入っており、ロケットエンジンが改良されることで最も脅威を感じるのは米国だ。今後は日本と韓国との防衛関係を強化し、中国に対しても制裁への賛成や北朝鮮との貿易を止めるよう求めるだろう。結果的に、米軍のアジアでのプレゼンスが拡大すれば中国との緊張関係が一段と高まる可能性も否定できない。一方、日本と韓国は防衛費を拡大し、関連法案を制定しようとする声も強まるだろうが、本当に必要なことなのかどうかは冷静に見極める必要がある。

 

室橋 祐貴(むろはし・ゆうき)

Platnews編集長。2015年株式会社Platn(プラトン)を設立、代表取締役CEOに就任。言論を通して社会問題の解決に貢献すべく、政治国際ニュースアプリ/ニュースメディアPlatnewsを開発・運営。
・Twitter:https://twitter.com/Yuki_muro
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