日本 行政

おおさか維新の会はどのような憲法改正を行おうとしているのか?

松井一郎
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国政政党「おおさか維新の会」が、独自の憲法改正に向けて動き出している。片山虎之助共同代表は、改正の「第一次試案」を4月に向けてまとめる意向を表明した。法律政策顧問を務める橋下徹前代表(前大阪市長)が、今夏の参院選に向けて、悲願の統治機構改革と教育無償化を助言したようだ。

参院選で、安倍晋三首相は与党におおさか維新を加え、改憲の発議に必要な3分の2以上の議席獲得に意欲を示す。一方、松井一郎代表(大阪府知事)は、9条改憲には慎重な構えを見せている。

 

おおさか維新の会は、国家再生のために、下記のような改革案を綱領の中で言及している。

基本方針

1.統治機構改革

憲法を改正し、首相公選制、一院制(衆参統合)、憲法裁判所を実現する。地方課題については地方自治体が国家の意思決定に関与できる新しい仕組みを創設する。

2.地方分権

首都機能を担える大阪都をつくり、大阪を副首都とすることで中央集権と東京一極集中を打破し、将来の多極化(道州制)を実現する。国からの上意下達ではなく、地域や個人の創意工夫による社会全体の活性化を図る。

3.既得権益と闘う成長戦略

既得権益と闘う成長戦略により、産業構造の転換と労働市場の流動化を図る。成長を阻害する要因を徹底的に排除しイノベーションを促進するとともに、衰退産業から成長産業への人材移動を支援する。

4.小さな行政機構

政府の過剰な関与を見直し、自助、共助、公助の範囲と役割を明確にする。公助がもたらす既得権を排除し、政府は真の弱者支援に徹する。供給者サイドへの税投入よりも消費者サイドへの直接の税投入を重視する。

5.受益と負担の公平

受益と負担の公平を確保する税制度や持続可能な社会保障制度を構築する。

6.現役世代の活性化

現役世代と女性の社会参画を支援し、世代間の協力と信頼の関係を再構築する。

7.機会平等

国民全体に開かれた社会を実現し、教育と就労の機会の平等を保障する。

8.法の支配

「法の支配」「自由主義」「民主主義」の価値観を共有する諸国と連帯する。現実的な外交・安全保障政策を展開し世界平和に貢献する。国際紛争を解決する手段として国際司法裁判所等を積極的に活用する。

 

この中で、憲法改正に関わる部分は、統治機構改革、地方分権、教育の機会均等だ。そこで、本稿では、統治機構改革の中で地方分権と教育の機会均等についてメリット・デメリットを見ていきたい。

 

東京一極集中を解消する地方分権

現行憲法の第92条は、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治体の本旨に基づいて、法律で定めることになっている」と明記。おおさか維新は中央集権と東京一極集中を打破するため、憲法を改正し、国からの上意下達ではなく、地方分権によって地方再生を促そうとしている。また地方分権の一環である「道州制」も検討している。「道州制」とは、都道府県を一旦廃止し、市区町村を中心に、内政の権限や拠点を道州に移譲することだ。国と地方の分担をもう一度大胆に見直す制度である。そのために、まず大阪を副首都にするための「大阪都構想」を掲げ、さらに関西州(大阪、京都、兵庫、滋賀、和歌山、奈良等)の実現も視野に入れている。

おおさか維新の会が掲げる「道州制」のメリットは、二重行政の解消による行政の効率化である。「大阪都構想」の例でいえば、大阪市を解体し、新たな特別5区に再編、府と市でダブりのある行政を府に一本化する。また、市の6200億円の税金を府に託し、5つの特別区に再分割することで、ハコモノ行政などの税金の無駄使いを解消させる。そして、行政・財政のコスト削減で浮いた分でインフラ整備・観光振興、医療・介護・福祉に歳出できるようになる。

一方、デメリットは、国の財政調整能力が小さくなることで、道州間競争によって格差が生まれることである。人口規模の違いや都市部か農村部か、高額所得者かそうでない地域かで財政力に差が生まれる。そこでは、教育、福祉などの国民生活に関わるような公共サービスでも格差が拡大され、地域間での人口の往来の結果、極端に人口も財政も少ない地域が生まれる。

 

少子化対策のための教育無償化

現行憲法の第26条2では、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、これを無償とする」と明記。しかし、おおさか維新は現行の憲法から「義務」を取り除き、「教育の無償化」を推進する。具体的に、幼稚園から大学までの教育費を無償化する考えを明らかにしている。

教育無償化のメリットとして、保護者の経済的負担が軽減することにより、日本の少子化対策になることが挙げられる。これは、労働力人口の増加から国家予算対策にもなる。

一方、デメリットは、巨額の歳出である。具体的に、2014年時点で、全国の5歳児だけでも年2600億円かかるとされている。おおさか維新は、公務員改革や国会議員定数削減などで確保すると言及しているが、財源的裏付けなどの課題は残りそうだ。日本の将来を担う子どもたちのために喜ぶべき公約ではある。しかし一方で、上記の改革による財源確保のみで全ての子どもたちを対象にできるかは疑問が残る。

 

そして、おおさか維新が掲げる改革案で最も影響力のある首相公選制や一院制も憲法改正を必要とするが、その詳細についてはまた別の機会に取り上げたい。

 

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